中川政七商店は、創業300年を超える老舗でありながら、縮小する工芸品市場で売上高100億円を突破した。その背景には、工芸品を現代の消費者に届けるための「構造転換」がある。同社は製造から販売までを自社で一貫して担う独自のSPA(製造小売)モデルを確立。従来のように百貨店などに卸すだけでなく、自社で企画・製造した商品を直営店で販売することで、ブランドの世界観をそのまま届ける仕組みを築いた。
2006年時点のビジネスモデル
工芸を現代の暮らしにフィットさせ、企画から販売まで自社で行う仕組みを確立した(図版:KADOKAWA)。中川政七商店では、その一貫した構造を土台に、工芸が持つ素材や技術を現代の暮らしにどう活かすかを考え抜く商品企画が進められている。伝統的な技法の美しさや背景を踏まえつつ、使い心地や手入れのしやすさ、インテリアとのなじみ方など、生活者の視点から細部を設計し直すことで、工芸の価値を日用品として受け取りやすい形へと翻訳した。こうした価値編集の積み重ねが、自社ブランドの世界観と品揃えの広がりにつながった。
企画から販売までの一貫体制
企画から製造、販売までの流れを自社が握ることで、直営店は単なる販売の場ではなく、工芸と生活者をつなぐ接点として機能するようになった。店頭では、工芸品の背景にある素材や技術、つくり手の工夫を伝えながら商品を提案できるため、生活者は「もの」と同時に「物語」をも受け取ることができる。こうした場づくりにより、工芸の魅力を体感しながら選べる環境が整った。
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