三菱UFJ銀行は8月26日、ライフステージ総合金融サービス「エムット」の新サービスとして、富裕層向け会員組織「エムット Excellent Club」を2027年3月に、デジタル相続プラットフォーム「エムットそうぞく」を2026年度下期にそれぞれ開始すると発表した。
富裕層向けサービスは、同行の預かり資産上位2%にあたる75万人を対象とする。この2%だけで、同行の個人顧客の預かり資産の約半数を占めるという。相続向けサービスは、非対面で相続を身近に感じてもらえるよう、簡単に利用できるサービスとした。こうしたサービスを通じて、さらなる優待などのメリットを提供して預金拡大につなげるとともに、相続による預金流出の防止を狙う。
「お客さまの人生丸ごと経済圏」を目指す
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)執行役専務リテール・デジタル事業本部長兼グループCDTOの山本忠司氏は、「お客さまの人生丸ごと経済圏として、生涯にわたって伴走できるサービス」だとアピールする。
エムットは、三菱UFJ銀行の総合金融サービスとして個人向けにデジタル技術を活用した様々なサービスを提供している。その結果、三菱UFJ銀行の口座開設数は2025年度に100万口座を突破し前年度比1.5倍、三菱UFJカード発券数は同100万件規模となり1.8倍になるなど、順調に拡大している。
現在は第1弾として、三菱UFJ銀行アプリのリニューアルやポイントUPプログラム、ポイント決済アプリの提供などを実施。今後は第2弾としてデジタルバンクやMUFG共通ID、ロイヤリティプログラムの投入などを目指している。今回の富裕層向けサービスとデジタル相続プラットフォームは、その第2弾に含まれる。
エムットは、お金にまつわる「つかう」「たまる」「ふやす」「つなぐ」の4つの領域に対してサービスを提供し、ユーザーのライフステージやニーズに寄り添ったサポートを目指している。三菱UFJ銀行は国内の金融機関で預金残高87兆円とトップで、2位の62兆円に対して1.5倍の規模だと山本氏は強調。これを最大の強みとして生かしたサービスを提供するのが戦略だとしており、その戦略のコアとなるのが今回の2つの新サービスだと話した。
富裕層向けサービス「エムット Excellent Club」の詳細
金利のある世界になり、金融機関における預金金利引き上げ競争が激化する中、MUFGでは「預金金利+αの付加価値」を競争軸として、他行に先駆けて富裕層向けサービスを拡充・強化していく。
エムット Excellent Clubは、三菱UFJ銀行の預かり資産残高を起点に各種サービスを提供する会員制の取り組みで、従来の「エクセレント倶楽部」を大幅に刷新する。山本氏は「ほぼ新しい施策で、従来のリニューアルとはあまり言っておらず、新しいサービスのローンチ」だと説明する。
対象は預かり資産3,000万円以上または資産運用残高1,000万円以上の人で、預かり資産では同行の上位2%にあたり、資産総額は50兆円以上。「国内最大規模の富裕層向けサービス」(山本氏)となる。
提供されるサービスは、会員限定クレジットカード、会員専用リモートプレミアムアドバイザリー、最高水準の預金金利優遇プラン、特別な体験価値、幅広い優遇サービスなど、金融から非金融まで多岐にわたる。会員制だが、条件を満たす顧客には順次招待を行い、加入を促す。条件に新たに達した人にも順次招待し、対象顧客の多くに加入してもらいたい考えだ。
専用クレジットカードと各種優遇
専用クレジットカード「エムット Excellent Club カード プラチナ アメリカン・エキスプレス・カード」は、「三菱UFJ銀行と三菱UFJニコスがタッグを組んで協働開発をしたことで実現した」(三菱UFJニコス角田典彦社長)商品で、「全く新しいタイプのクレジットカード」だとアピールする。
プラチナカードながら、Excellent Club会員専用のため入会金・年会費はすべて無料。会員であれば永年無料というシンプルな設計だ。カードは縦型で、「至極色」を採用して高級感を演出している。
三菱UFJ銀行の預金残高が多くなるほどポイント還元率が高くなる「銀行預かり残高連動型クレジットカード」で、国内初の仕組みとして特許出願中。預金残高3,000万円でポイント還元率は1.0%だが、残高に応じて最大1.6%まで上がる。普通預金だけでなく定期預金や資産運用の残高も対象となる。
ほかに三菱UFJニコスが提供するポイントアッププログラムによる最大還元20%、クレジットカード積立の最大7.0%還元、各種旅行・グルメサービスの付帯サービスも提供される。アメリカン・エキスプレスのサービスにも対応する。
リモートプレミアムアドバイザリーとその他の特典
専用リモートプレミアムアドバイザリーサービスは、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券というMUFGの金融部門の知見を結集し、「いつでも顧問のように相談できる」サービス。各領域の厳選された金融の専門家を選んで非対面で相談でき、「総合病院の専門医に直接アクセスできるような感覚」(MUFG常務執行役員リテール・デジタル事業本部副本部長兼法人・ウェルスマネジメント事業本部副本部長兼ウェルスマネジメントユニット副ユニット長・旦一哉氏)を提供する。
資産運用だけでなく、財産管理、相続、不動産、税務まで幅広い領域をカバーしている点も特徴で、プロフィールを見ながら専門家を会員が選んで相談できる。
「業界最高水準」という預金金利は、円定期だけでなく外貨定期、退職金定期でも優遇プランを用意。住宅ローンなどの金利優遇は、会員本人だけでなく家族のローンにも対応し、「家族を含めたライフステージの変化に伴う借入を支援する」と旦氏は言う。
万が一会員が死亡した場合も、家族会員の退会を1年間猶予する承継機能を設けた。その間に相続などで家族の資金が3,000万円を超えれば、改めて本人会員になってサービスを継続できる。
他にも、人気のスポーツ観戦イベントの招待や美術館貸し切りなどの特別な体験価値、グルメ、ホテル、旅行など全国20万種の優遇・割引サービスの利用などの特典も提供する。
現在の三菱UFJ銀行エクセレント倶楽部はエムット Excellent Clubに移行する。今後、三菱UFJ信託銀行のエクセレント倶楽部も「エムット Excellent Club シニア版(仮称)」として移行する計画。さらに、他のMUFGグループも参画していく方針で、「銀行の預かり資産残高」だけでなく「グループ全体の預かり資産残高」として対象顧客を拡大していく。
デジタル相続プラットフォーム「エムットそうぞく」
富裕層だけでなく、三菱UFJ銀行に預け入れた資産の相続をデジタルで支援するのが「エムットそうぞく」。日本は少子高齢化が進行し、認知症患者数や年間死亡者数が増加している。ただ、相続対策には手続き、費用、心理面で様々なハードルがあり、万が一の時に本人や家族の負担が大きくなる傾向にあったと山本氏は話す。
エムットそうぞくは基本的にリモートで利用できる相続支援サービスで、まずは「家族共有ノート」「もしもの口座バトン」「もしものたくす合鍵」の3サービスを提供する。これにより、生前の早い段階から無料で相続対策が行え、遺産分割協議も経ずに手続きできる利便性を提供する。
もしもの口座バトンは、三菱UFJ銀行の資産について、あらかじめ相続で受け取る家族と受取割合を指定しておき、それぞれの電子署名と電話確認によって手続きを行う。相続割合だけを提供し、手数料も不要。来店も不要で手軽に手続きできるのが特徴だ。
相続が発生した場合は、あらかじめ決められた割合で受取手続きに進むため、遺産分割協議が不要となり、3カ月程度かかっていた相続が最短1カ月程度に短縮化されるという。
家族共有ノートは、家族と対話しながら家族に伝えたい情報などを整理して記録。もしものたくす合鍵で財産管理と相続時の承継を準備できる。これらを組み合わせることで、デジタルでスムーズな相続を実現する。
相続は富裕層だけの問題ではなく、特にこれまで大きな相続が発生していない会社役員など、経験がない人も手軽に利用できる点でメリットを感じられそうだ。
山本氏は「相続時に資金が外部に流れがち」との問題意識があったと説明。これまでは親が地方銀行に預金し、上京していた子どもの三菱UFJ銀行に相続で入金される例が多く「圧倒的に入り超だった」という。ところが今は子どものネット銀行に流れる例が増えている。特に子どもが三菱UFJ銀行に口座を持っていない場合、相続の入金先としては新たに口座を作るのではなく、今持っているネット銀行に送金することが求められるという。
エムットそうぞくで生前から話し合い、相続のために子どもも三菱UFJ銀行の口座を作っておいてもらえれば、相続された資産は移動されづらくなり、資産が承継されて流出が抑えられる。サービス自体は無料で提供するが、こうしたトータルで収益化を図る考え方は、エムット Excellent Clubカード プラチナでも同様で、MUFG全体で採算性を取るという考え方だ。
エムットそうぞくでは、今後さらにAIコンシェルジュの導入、非対面による相続手続き代行など、さらなるサービス拡充を行う予定。
今後の展開
エムットではこれまで、銀行口座、クレジットカード、資産運用といった機能を用意し、今回、富裕層、相続へと機能を拡張する。山本氏は「一生寄り添えるサービスが完成しつつある」と指摘。共通ポイントなどで言われる「経済圏」という考え方に対して、「お客さまの人生丸ごと経済圏」として、一生を伴走するサービスとして構築していきたい考えを示す。こうした取り組みによって預かり資産をさらに拡大していくことを狙い、「圧倒的なストックを強みに、エムットの進化を続けていく」とアピールする。
その進化としては、デジタルバンクや共通ID、ロイヤリティプログラム、エムットポイントといったサービスに加え、2028年にはネット証券2社を統合してエムットの運用サービスも提供する。各サービスにAIを掛け合わせることで、先進性を加速して金融体験の向上も図っていきたい考えだ。



