2026年5月、軽井沢で開催された「ロードスター軽井沢ミーティング2026」は、マツダを代表するスポーツカーであるロードスターとロータリーエンジン搭載車のオーナーが一堂に会するイベントとなった。会場にはさまざまな世代のロータリーエンジン搭載車が集結し、参加者同士の熱い交流が繰り広げられた。
部品復刻の背景とミクニの役割
クラシックマツダの神辺浩司氏は、会場で次のように語った。「昨年のイベントで質問を受けた3日前に在庫切れになったと知り、まだ何もできていませんでした。1年後の今日、ようやく進展をお伝えできます」。FC後期型およびFD前期型用のメタリングオイルポンプ(通称メタポン)の製造元だったサプライヤーに復刻を打診したが、設備も金型も失われており断られた。図面もすべて廃棄されていたため、万事休すの状況に陥った。
そこで頼ったのが、1923年創業の老舗部品メーカー、株式会社ミクニだ。ミクニはかつて「ミクニソレックス」のキャブレターで知られ、現在は流体を精密にコントロールする技術を活かし、スロットルバルブや各種ポンプ類を2輪・4輪メーカーに供給している。
ロータリーエンジンとミクニの深い縁
ミクニとロータリーエンジンの関係は古く、1967年デビューのコスモスポーツに搭載された10Aロータリーエンジンに採用されて以来、マツダのロータリーエンジン用メタポンはほとんどがミクニ製だった。FC型RX-7のマイナーチェンジで電子制御式メタポンに切り替わり、別サプライヤーに変更されたが、技術的な知見はミクニに蓄積されていた。
最初は難色を示したミクニだったが、社内でも少量多品種での補用部品供給というビジネスモデルへの課題意識があり、マツダの相談がそのテーマと合致した。さらに、元マツダのエンジニアである藤原清志氏がマツダ退任後にミクニの取締役に就任しており、両社の深い信頼関係がこの連携を可能にした。
ファンへのメッセージと今後の展望
岩手・盛岡事業所から駆け付けたミクニの製造グループ長・渡辺健一郎氏は、集まったロータリーオーナーたちに向けてこう語った。「みなさんが愛車を手放さずに乗り続けてきた理由は、そのクルマが人生そのものだからではないかと思います。部品がないかもしれないという不安を持って乗ることから、誇りを持って乗り続けられる安心へと変えていけるビジネスを目指したい。FC後期型のメタリングオイルポンプを、純正品として蘇らせます」。
この取り組みは、単なる部品供給にとどまらず、マツダとファンの関係構築に新たなモデルを示すものだ。メーカーがオーナーの愛車に対する思いに応え、部品の安定供給を通じてブランドへの信頼を高める姿勢は、今後の自動車業界における顧客との関係構築の在り方を考える上で重要な示唆を与えている。



