最大震度7を観測した熊本地震の発生から28日で1か月を迎えた。台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場をはじめ、熊本県内に集積する半導体関連工場も被災したが、主要な工場は1か月以内に生産活動を再開した。背景には、各社が10年前の地震を教訓に備えを進めてきたことがある。
三菱電機は2日で再開、10年前の約20日から大幅短縮
27日、熊本県合志市でパワー半導体を製造する三菱電機パワーデバイス製作所熊本事業所では、物流トラックなどが活発に行き交っていた。7月28日の地震で同市は震度6弱を観測した。工場は一時、生産を停止したが、2日後に操業を再開し、今月26日には地震前の生産水準に回復した。
2016年の地震では、工場内の製造装置がずれたり、棚から製品が落ちたりし、操業再開までに約20日間を要した。教訓を踏まえ、設備の固定方法を抜本的に見直していた。今回は装置やクリーンルームに大きな被害が出ず、早期復旧につながった。被害額は10年前の4分の1から3分の1程度とみている。
建物自体の免震装置を導入した同県菊池市の新工場はさらに被害が小さかった。両工場を所管する永野慎吾・熊本事業所長は「対策のおかげで早期復旧できた。半導体の安定供給はインフラ(社会基盤)を支える企業の責任だ」と力を込める。
ルネサスやTSMCも早期復旧、業界連携も
熊本県は全国有数の半導体関連産業の集積地で、23年の半導体関連の出荷額は9284億円に上る。10年前の地震は震源が集積地に近く、多くの企業で工場や設備に大きな被害が出た。このときの教訓から、各社は対策を強化していた。
今回、主要工場の中で震源地に最も近かったルネサスエレクトロニクスの川尻工場(熊本市)では、各装置の揺れを個別に抑える「免震台」に載せるなどの対策を行っていたほか、備品の予備を確保する対策も講じ、4日には生産を再開した。
前回の地震後の24年12月から量産を開始したTSMC熊本第1工場(菊陽町)は、地震発生から6日後の8月3日には通常の生産体制に復帰した。台湾の本社からもエンジニアらが応援に駆けつけ、装置の調整などの助言を行ったという。
業界連携と今後の投資計画
業界で連携する動きもみられた。大手電機メーカーなどでつくる電子情報技術産業協会(JEITA)を構成するソニーグループや三菱電機など12社は、18年から、工場が被災した際に部材や材料を相互に融通し合う仕組みを作っている。三菱電機などによると、今回の地震でも活用された。
東京エレクトロンでは、調達品の生産拠点の被災状況を確認できる仕組みを構築し、今回の地震で被災したサプライヤー(供給事業者)の復旧を支援する取り組みを実施した。「取引先と共に安定生産、調達ができる体制を確立してきた」(広報)とする。
地震後も大規模投資、集積は今後も進む見通し
熊本県内では今回の地震が起きた後も、大規模な投資計画が発表された。ソニーグループとTSMCは今月11日、ソニーが熊本県合志市に新設する工場を拠点に、次世代画像センサーを製造する合弁会社を設立すると発表した。出資額は計7470億円で、スマートフォン向け製品の量産を2029年に開始する計画だ。
TSMCも菊陽町で建設中の第2工場の工事を継続しており、県内では今後も半導体産業の集積が進む見通しだ。各社には10年前同様、今回の地震の経験も事業継続計画(BCP)などに生かすことが求められる。



