インドネシアがボルネオ島のジャングルに総事業費300億ドル(約5兆円)を投じて建設中の新首都ヌサンタラは、宮殿や新道路、オフィス群が整う一方、中核部の住民は約1万人にとどまり、政府機能の移転も実現していない。壮大な未来都市は、完成前から「ピカピカの廃墟」と化している。
「鷲の宮殿」がそびえる無人の大通り
インドネシア・ボルネオ島の深い木々を抜けた先に、複数車線の新しいハイウェイと白亜のオフィス群が現れる。中核政府地区(KIPP)には、純白の国家宮殿「イスタナ・ネガラ」があり、背後には高さ約77メートルの巨大な鷲型の建造物、大統領の執務棟「イスタナ・ガルーダ(ガルーダ宮殿)」がそびえる。金属製の外装は20階建てビル相当の高さだ。
インドネシアは2019年、大気汚染や慢性的な渋滞、地盤沈下に苦しむ現首都ジャカルタに代わり、ボルネオ島・東カリマンタンのジャングルに新首都を建設する構想を発表。再生可能エネルギーを電力源とし、先端技術で運営する都市を目指した。米公共ラジオ放送局NPRによると、総額300億ドル超のプロジェクトは2022年に着工し、現在までにKIPPはほぼ完成した。だが、新都市の大通りに人影はほとんどない。
英紙は「見かけ倒しのゴーストタウン」と警告
現在、新首都を行き交うのは庭師と観光客程度だ。NPRが今年4月に報じたところでは、中核部の住民は約1万人で、うち公務員はおよそ1000人。英日刊紙ガーディアンは昨年10月、ヌサンタラが「見かけ倒しのゴーストタウン」になりかねないと警告した。
政府機能の移転も進んでいない。インドネシア英字紙ジャカルタ・グローブによると、憲法裁判所は今年5月、首都移転を定めた2022年の新首都法(IKN法)の違憲審査請求を棄却したが、大統領が正式な移転令を発するまでジャカルタが国家の首都であると全員一致で確認した。同裁判所のアディエス・カディル判事は「法的・政治的にはヌサンタラが国家首都として指定されているが、移転プロセスはまだ大統領令を待っている段階だ」と説明する。
予算縮小と政権交代の影響
計画の失速は2024年10月の政権交代に端を発する。ヌサンタラは元々、ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)前大統領の肝煎り事業だったが、後任のプラボウォ・スビアント大統領のもとで国家の予算配分は大きく変わった。ガーディアンによると、ヌサンタラへの割り当て額は2024年の20億ポンド(約4370億円)から2025年は7億ポンド(約1530億円)、2026年は要求額の3分の1にあたる3億ポンド(約655億円)へと急速に縮小した。



