エルメスジュエリー、ヴィンテージ市場で急騰
ヴィンテージ業界で最も注目を集めるカテゴリーの一つが「エルメスのジュエリー」だ。価格の高騰が続き、今では資産としての価値も確立しつつある。日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム「VCM」の代表であり、渋谷パルコ4Fにエルメスジュエリー専門店「VCM COLLECTION STORE」を運営する株式会社VCM代表取締役の十倍直昭氏に、その魅力と市場の動向を聞いた。
なぜエルメスなのか?「メンズ需要」が火をつけた直近5年の動向
エルメスは1837年にブランド設立、ジュエリーに着手したのは1938年と約80年の歴史を持つ。もともとは馬具メーカーで、「バーキン」や「ケリー」といった革製品が有名だが、ジュエリーも作り続けてきた。十倍氏は「今のように一気に人気が加速したのは、ここ5年ほどのこと」と語る。
それまでは「上品で洗練された大人が身につけるアクセサリー」というイメージが強かったが、古着を好む人々がファッションに取り入れるようになり、ヴィンテージの文脈でも楽しまれるようになった。以前は専門的に扱う店舗がほとんどなく、欲しいものがあれば各店を回って探すのが当たり前だったが、ここ5年で需要が大きく増え、市場全体が変わったという。
エルメスだけが突出する理由
エルメスはシルバージュエリーに特に力を入れてきた。ティファニーなど他のブランドもあるが、エルメスは男性のファッションにも自然に取り入れやすいデザインが豊富だ。十倍氏は「歳を重ねるとロレックスのような高級時計を選ぶ方が多い一方、男性のジュエリーはクロムハーツやゴローズが代表的だった。近年はファッションの楽しみ方が多様化し、幅広いスタイルに合わせられるジュエリーを求める方が増え、エルメスのデザインが支持されるようになった」と分析する。
さらに資産性の高さも魅力だ。「洋服やジュエリーに対しても、ステータス性だけでなく、長く使えて価値が下がりにくい“資産”としての側面を求める人が増えている。時計に集まっていたような需要がジュエリーにも派生している」と語る。
若年層ほど賢くリセールを意識する時代
購入層の変化について、十倍氏は「以前は女性が中心だったが、今では男性客が非常に増えた。年齢層も幅広く、中心は30~40代だが、20代前半やさらに若い世代にも広がっている。『アルバイトでお金を貯めたので買いに来ました』という方もいる」と述べる。
「若い世代ほど資産性やリセールバリューを意識している。フリマアプリなどが日常的に使われている世代なので、『買った後の価値』まで考えて選んでいる。だからこそ、長く使えて価値が維持されやすいエルメスに惹かれる方が増えている」と説明する。
ヴィンテージと現行品の選択については、「エルメスのジュエリーは歴史が長く、廃盤となったデザインも多い。現行品も素晴らしいが、ヴィンテージには当時の職人技や希少性があり、希少なモデルは現行品以上の価値で取引される」とアドバイスする。
「原点にして頂点」特に人気のモデルは?
現在特に人気のアイテムについて、十倍氏は「ブレスレットでは『シェーヌ・ダンクル』が圧倒的。原点にして頂点で、エルメスの基礎。海の錨の鎖がモチーフのブランドを象徴するブレスレット」と語る。シェーヌ・ダンクルには初期から現行までいくつかの世代があり、初期はコマの形状が異なり、素材に「シルバー800」が使われるなど細かなディテールの違いがある。
他にも人気モデルとして、1946年誕生の馬のベルトをモチーフにした「ブックルセリエ」、2006年発売でコマが一個ずつ手で外せる「アクロバット」、音楽記号にちなみコマが徐々に大きくなる「クレッシェンド」などを挙げる。十倍氏は「エルメスのジュエリーには、海をルーツにしたデザインと馬具をモチーフにしたデザインの二つの流れがある。背景を知ると見え方が変わる」と解説する。
ゴールドジュエリーに海外からも熱視線。日本が世界を牽引する市場
今後のトレンドについて、十倍氏は「ここ1~2年でゴールドジュエリーへの関心が高まっている。以前はシルバーに比べてハードルが高いと感じる方も多かったが、古着やシンプルなファッションに上品に合わせるスタイルが浸透し、取り入れる方が増えた」と述べる。
金そのものの価値が見直されていることも人気の理由で、「海外のお客様にもゴールドジュエリーは非常に人気。特にアジア圏からヴィンテージ・エルメスのゴールドジュエリーについて問い合わせをいただく機会が増えている。日本に残るヴィンテージ・エルメスの品質やコンディションの良さに魅力を感じていただいている」という。
ヴィンテージ・エルメスの市場において、日本の存在感は大きい。「日本は古くからヴィンテージカルチャーが根付き、世界的に見ても質の高いヴィンテージショップが多い。海外のバイヤーがSNSを通じて日本のショップをチェックし、来日して買い付けをするケースも少なくない。本国フランスでも注目が高まっているが、日本は世界のヴィンテージ市場を代表する存在の一つ」と強調する。
最初の一本を選ぶために
ヴィンテージジュエリーに興味を持ち始めた方へ、十倍氏は「まずは純粋に惹かれるデザインを選んでほしい。流行だけで選ぶものではなく、長く付き合っていける魅力がある。適切にメンテナンスしながら長く愛用できることも魅力で、身につけるほどに自分らしい表情になっていくのもヴィンテージならではの楽しさ」と語る。
「最初はブレスレットから手に取り、リングやネックレスなど少しずつコレクションを広げるのもおすすめ。長く愛用しながら、自分だけの一本として育っていく過程を楽しんでほしい」と締めくくった。



