賃貸オーナーを長年悩ませてきた「事故物件」の問題に、ユニークな解決策を提供する人物がいる。元不動産マンで、現在は株式会社カチモードの代表を務める児玉和俊さんだ。彼は科学的な手法を用いて、事故物件に「オバケがいない」ことを証明する「オバケ調査」を手がけている。1件あたりの料金は8万円(税抜)。夜22時から翌朝6時までの8時間、児玉さんは事故物件の部屋に一人で泊まり込み、カメラやサーモグラフィー、電磁波測定器などの機材を駆使して異常現象の有無を調べる。
このユニークなビジネスには、なぜ依頼が絶えないのか。その背景には、事故物件となった部屋の価値を取り戻したいというオーナーたちの切実な事情がある。事故物件とは、入居者が部屋内で死亡した物件を広く指す。しかし、すべてのケースで告知義務が発生するわけではない。自殺や殺人、または特殊清掃が必要な自然死や事故死の場合に限り、入居希望者に対して「告知事項あり」と明示する必要がある。告知がある物件は、多くの入居希望者から「気味が悪い」「何か起きるのでは」と敬遠されがちで、家賃を下げざるを得なくなるケースが多い。
調査の実態と依頼の背景
児玉さんは調査当日、早めに現地入りする。夜22時からが本調査だが、15時から16時には到着し、建物の共用部や周辺環境をチェックする。これは、物件内で異常がなくても、外観や共用部の汚れが入居者の印象を悪くする可能性があるためだ。調査後は、そうした点も含めてオーナーにフィードバックするコンサルティング的な役割も担う。
調査で異常現象が確認されるのは約1割のケースだ。ほとんどの場合、原因は建物の経年劣化や配管の音、近隣の振動など科学的に説明可能なものだという。証明できないケースは稀で、その場合は継続調査を提案している。
「オバケなし」証明の効果
児玉さんは調査後、オーナーに「オバケなし証明書」を発行する。この証明書は、入居希望者への告知資料として活用できる。実際、証明書を提示することで、事故物件でも通常の家賃で入居者が決まるケースが増えているという。オーナーは家賃を下げずに済むため、依頼が絶えないのだ。
児玉さんはもともと不動産会社に勤めていたが、事故物件の問題に直面したオーナーを支援したいと脱サラし、起業した。「妻への説明には苦労しました」と笑う。現在の収入は不動産マン時代から半減したが、事故物件の価値を取り戻す仕事にやりがいを感じているという。
「事故物件は今後も増え続けるでしょう。だからこそ、この仕事には存在価値がある」と児玉さんは語る。高齢化社会の進展に伴い、孤独死などのケースは増加傾向にある。児玉さんのような存在が、事故物件のスティグマを減らし、空室問題の一助となる可能性を秘めている。



