「バカすぎる」と学校を退学になった少年が、後にイギリス宝石市場の約4分の1を支配する企業グループのCEOに上り詰めた。しかし、その男はたった一度の軽率なジョークで、時価総額2000億円(5億ポンド)を一夜にして消し飛ばし、自らも会社を追われることになる。
安売り路線で急成長したラトナーズグループ
ジェラルド・ラトナーは1965年、15歳で父の営む小さな宝石店で働き始めた。当時の宝石店は高級志向で庶民には敷居が高かったが、父の死後経営を引き継いだジェラルドは、型破りな手法で改革に乗り出す。店を赤やオレンジの派手なポスターで埋め尽くし、「激安!」「全品半額!」と宣伝。BGMもクラシックから大音量のポップソングに変えた。同業者からは「品がない」と批判されたが、若者や労働者層に大歓迎され、ラトナーズグループは急成長を遂げた。1980年代にはイギリスジュエリー市場の約4分の1を占めるまでになる。
講演でのブラックジョークが引き金に
ある日、ジェラルドは6000人の聴衆を前に講演を行った。その中で、自社の商品がいかに安いかを強調するため、「なぜそんなに安く売れるのか」という質問に対し、彼はこう答えた。「うちの商品は『完全なゴミ』だからだ」。会場は大爆笑に包まれた。しかし、このジョークはすぐにメディアで大きく報じられ、消費者の信頼を大きく損なう結果となった。
株価急落、5億ポンドが消失
講演の翌日からラトナーズの株価は急落し始め、瞬く間に時価総額の約5億ポンド(当時のレートで約2000億円)が消え去った。投資家の信頼を失った同社は経営危機に陥り、ジェラルドはCEOの座を追われた。彼は後に「あのジョークは私の人生最大の過ちだった」と振り返っている。
どん底からの大逆転劇
しかし、ジェラルドの物語はここで終わらない。失意のどん底にあった彼は、その後、新たなビジネスを立ち上げ、再び成功を収める。彼の経験は、ビジネスにおける言葉の重みと、失敗から学ぶことの重要性を如実に示している。
クイズ作家の近藤仁美氏は著書『世界を変えた「凡ミス」図鑑』(三笠書房)で、このエピソードを「ウケ狙いの軽口が大火傷を招いた」典型例として紹介している。



