物流大手の鈴与(静岡市)は、2029年度をめどに「空飛ぶクルマ」と呼ばれる次世代の空の移動手段の商用運航を開始する目標を示した。8月中旬に静岡県庁で開かれた「県次世代エアモビリティ実装協議会」の初会合で、鈴与や三菱地所が事業案を明らかにした。
想定する2路線と価格帯
事業案では、清水港周辺と日本平を結ぶコースと、富士山の遊覧を軸にしたコースの2路線を想定。今年度中に機体の調査や航路の検討、収支の計算などを進める。
鈴与を中心とする共同事業体には、静岡鉄道やJTB、しずおかフィナンシャルグループのほか、機体を製造するスカイドライブなどが参加している。
県は昨年度、需要を調べるため、ヘリコプターを「空飛ぶクルマ」に見立てた遊覧飛行を県内在住の外国人向けに実施。アンケートの結果、清水港~日本平の短距離コース(10分)は5万円程度、清水港~富士山方面の長距離コース(30分)は10万円程度が「受容価格帯」と確認できたという。
実用化に向けた課題
鈴与の吉村興三郎参与は「富裕層の訪日客が富士山を観光するために大きなお金を払っていただけると考えている。次世代のモビリティーを活用した、本県ならではの観光コンテンツを開発していきたい」と語った。
一方、本格的な運航開始に向けては課題も多い。会合の冒頭であいさつした鈴木康友知事は「様々な規制の緩和や新たなルール作りが必要となってくる」と指摘し、多額の財政支援が必要になるとの認識も示した。
焦点の一つが、離着陸場周辺の建物の高さを制限する「制限表面」の基準だ。従来の機体を前提に定められたもので、垂直に離着陸する「空飛ぶクルマ」の特性に合わない面がある。
離着陸場の整備と今後の方針
実際、三菱地所が「御殿場プレミアム・アウトレット」に整備した離着陸場は、離着陸できる機体の大きさに制約があり、小型の機体しか利用できない。そのため、既存の立体駐車場を活用した「高架化」によって、より大きな機体が発着できるように整備していくという。
今後は国が進めるルール整備の動きを注視し、現場での課題を国に説明しながら実用化に向けた協議を進めていく方針だ。



