銀座の客単価5万円の完全おまかせ鮨店を予約していた経営者が、当日になってVIPの妻が生魚を食べられないことが判明し、急きょ予約をキャンセル。向かった先は神奈川・小田原の一貫数百円の回転寿司店だった。このエピソードは、富裕層マーケティングを専門とする西田理一郎氏(価値共創プロデューサー、ディープルート代表取締役)が明かしたもので、接待の本質を問い直す内容となっている。
高級鮨をキャンセルした経営者の決断
都内で複数の事業を手掛ける経営者は、海外から来日した重要クライアントのVIPをアテンドするため、数カ月前から銀座の客単価5万円の完全おまかせ鮨店を予約。大将と懇意にしている「絶対に外さない勝負店」だった。しかし当日昼過ぎ、秘書から「VIPの奥さまが生魚をまったく食べられない」との連絡が入る。完全おまかせ店では当日の急なメニュー変更は基本的に不可能で、生魚を食べられない客が一人でもいれば、その夜の空気は凍りつく。経営者は即座に銀座の予約をキャンセルし、大将に丁重に謝罪。ハイヤーの行き先を小田原の回転寿司店に変更した。
回転寿司で得られるもの
西田氏は「接待の成功を左右するのは『高級店かどうか』ではない」と断言する。一貫99円の回転寿司であっても、相手の状況に合わせた柔軟な対応や、特別な体験を提供することで、高級鮨では得られない心に残る接待が可能になるという。回転寿司店では、寿司が回る横で生ハムや鴨のコンフィが出てくるなど、多様なメニューが用意されており、生魚が食べられない客にも対応できる。
「夜の編集権」が勝敗を分ける
西田氏は、接待で真価が問われるのは「3回目~4回目」の会食だと指摘。お金ではなく、「夜の編集権を握る」者が勝つと述べる。つまり、店選びや段取り、相手の嗜好を考慮した演出が重要であり、高級店に頼るだけでは不十分だ。また、数少ない「喫煙できる店」を押さえておくことも、相手のニーズに応えるためのテクニックの一つとして紹介されている。
店を予約する前に自問すべき3つの問い
西田氏は、接待の前に「相手は本当にこの店を楽しめるか」「自分の目的は何か」「予算に見合った価値を提供できるか」の3つを自問すべきだと提唱。高級鮨は関係構築の入り口に過ぎず、本当の価値は相手の心に残る体験を創出することにあると強調する。



