中国・藍箭航天の再使用ロケット朱雀三号、実用化へ前進…第1段の垂直着陸に成功
朱雀三号、第1段の垂直着陸に成功…中国の再使用ロケット開発前進

中国の民間宇宙企業・藍箭航天(LandSpace)が開発する再使用ロケット「朱雀三号」が、実用化に向けて大きく前進した。2026年8月19日、中国北西部の東風商業航天創新試験区から打ち上げられた朱雀三号2号機(遥二)は、衛星を予定の軌道へ投入するとともに、第1段を陸上の着陸場へ垂直着陸させることに成功した。

中国では7月10日にも、国有企業の「長征十号乙」ロケットが、第1段の海上回収に成功している。中国の再使用ロケット開発は、この1カ月余りで大きな成果を挙げたことになる。だが、再使用ロケットが技術的、そして経済的に成立するためには、課題も多い。

藍箭航天と朱雀三号の概要

藍箭航天は2015年に設立された中国の民間宇宙企業だ。同社の名を世界に知らしめたのが「朱雀二号」だった。2023年7月、朱雀二号は液体酸素と液体メタンを推進薬に使うロケットとして、世界で初めて軌道投入に成功した。

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同社が次に挑んだのが、朱雀三号の開発だ。第1段を回収し、繰り返し使うことを前提とした2段式ロケットで、今回飛行した2号機の全長は66.1m、第1段と第2段の直径は4.5m、フェアリングの直径は5.2mとなっている。打ち上げ時の質量は約570tで、機体の主構造にはステンレス鋼を使っている。

第1段には、液体酸素と液体メタンを推進薬とする「天鵲12A」エンジンを9基搭載し、合計で7542kNの離昇推力を生み出す。天鵲12Aは50~110%の範囲で推力を調整でき、空中での再点火にも対応する。第2段には真空用の「天鵲15A」エンジンを1基搭載する。

メタンはケロシンに比べて燃焼時に煤が生じにくく、エンジンを繰り返し使ううえで有利だ。また、ステンレス鋼は材料費を抑えやすく、溶接加工もしやすい。さらに耐熱性にも優れており、機体を繰り返し使用するうえでも利点がある。

現行仕様と将来計画

実際に飛行した朱雀三号の1号機と2号機は、暫定的な仕様と位置付けられている。現在の仕様では、低軌道への打ち上げ能力は、使い捨ての場合で約11.8t、第1段を回収する場合で約8tにとどまる。

将来的には、推進薬タンクを延長して搭載できる推進薬量を増やすとともに、第1段エンジンも80t級から100t級へ高推力化し、打ち上げ能力を高めるという。同社が完成仕様として示している朱雀三号は、全長76.6m、離昇推力約8,800kNで、第1段には「天鵲12B」エンジンを9基、第2段には「天鵲15B」エンジンを1基搭載する。低軌道への打ち上げ能力は、使い捨ての場合で21.3t、第1段を回収する場合で18.3tまで高まるとしている。

回収システムと独自の着陸場

朱雀三号の第1段には、回収のための装備として、着陸脚のほか、姿勢制御装置(RCS)、グリッド・フィン(格子状の操舵翼)、ストレーキなどを備えている。帰還時には、RCSやグリッド・フィンで機体の姿勢や飛行方向を制御しつつ、ストレーキが生み出す揚力を利用して飛行経路を調整する。その後、エンジンを再点火して減速し、最後に着陸脚を展開して垂直着陸する。

着陸場所にも特徴がある。朱雀三号は、発射地点から飛行方向に約390km離れた甘粛省民勤県に、陸上の専用着陸場を設けている。発射場まで引き返す場合に比べて帰還に必要な推進薬を抑えられ、洋上の船とは異なり、着陸面が波やうねりで動かないという利点がある。広大な土地を利用できる中国内陸部の地理的条件を生かした回収方法ともいえる。一方で、洋上の船のようにミッションに応じて着陸場所を変えることができず、利用できる飛行経路が限られるという欠点もある。

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米国の再使用ロケットとの共通点

こうした朱雀三号の設計には、技術や実績で先行する米国の再使用ロケットとの共通点が多い。液体酸素と液体メタンを推進薬に使い、機体の主構造にステンレス鋼を採用する点は、スペースXの大型再使用ロケット「スターシップ」と共通する。また、ブルー・オリジンの「ニュー・グレン」も、第1段の燃料にはメタンを主成分とする液化天然ガス(LNG)を使っている。

回収方法にも、それぞれ共通点がみられる。グリッド・フィンで帰還時の姿勢や飛行方向を制御し、着陸脚を使って垂直着陸する仕組みは、スペースXの「ファルコン9」に近い。一方、機体側面にストレーキを備え、そこで生じる揚力を帰還飛行に利用する点は、ニュー・グレンと共通する。

このように朱雀三号は、推進薬と機体構造ではスターシップ、帰還時の制御と垂直着陸ではファルコン9、ストレーキを使った帰還飛行ではニュー・グレンと、米国で先行する複数の再使用ロケットに共通する特徴をあわせもっている。一方で、発射場から離れた固定式の陸上着陸場へ第1段を回収するという、独自の特徴も備えている。