「気がついたら1年の半分がもう終了してしまった…」――大人になると時間が「異様に速く感じる」という現象には、科学的な理由がある。山口大学時間学研究所元所長の藤沢健太教授と、千葉大学大学院人文科学研究院教授で日本時間学会会長の一川誠教授の知見をもとに、そのメカニズムと対策を探る。
ルーティンが時間感覚を縮める
大人になると、毎日同じ時間に起き、会社に行き、似たような仕事をこなすルーティンが増える。繰り返しが多いほど、一つひとつの出来事は特別さを失い、印象に残りにくくなる。時間に注意を向ける回数も減り、「この作業はこれくらいでできる」とわかると、時計を見ることも少なくなる。認識される出来事の数が減ると、時間は心理的に圧縮されるのだ。
記憶が多い人ほど時間は豊か
では逆に、時間を伸ばすことはできるのだろうか。「もう年末か」「今年も早かったな」――こう感じるとき、私たちは一年をひとまとめにしてしまっている。しかし「今年の正月は何をしたっけ」「春にどこへ旅行したっけ」と個別のイベントを思い出すと、時間が膨らむ。思い出せるイベントの数が多いだけで、一年はぐんと伸びるのだ。
カリフォルニア大学リバーサイド校のソニア・リュボミアスキー教授の研究によると、思い出せるエピソードが多い人のほうが、幸福度や充実感が高いという。重要なのは「その瞬間に楽しかったかどうか」ではなく「いま思い出せるかどうか」であり、記憶こそが時間の豊かさを決める。
新しい体験が時間の密度を上げる
また、「新しい体験を増やすこと」も有効だ。行ったことのない場所に行く、やったことのないことをやってみるなど、「初めて」を意識的に増やすことで時間の密度は上がる。年齢に関係なく、時間を豊かにすることは可能である。



