木村拓哉×堺雅人『エンジン』夏に見返したい理由 井上由美子の脚本が光る
木村拓哉×堺雅人『エンジン』夏に見返したい理由

夏ドラマは『VIVANT』『Tシャツが乾くまで』のTBS2作が話題の中心となる中、業界内で評価が高いのが『さよならノワール』(フジテレビ系)。「犯罪被害者の支援」をフィーチャーした刑事ドラマの枠を広げる意欲作であり、井上由美子の緻密な脚本が冴え渡っている。

井上由美子の代表作と『エンジン』の位置づけ

その井上は『白い巨塔』(フジ系)、『14歳の母』(日本テレビ系)、『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジ系)、『パンドラ』(WOWOW)などを手がけた業界屈指のヒットメーカー。さらに『GOOD LUCK!!』(TBS系)、『BG ~身辺警護人~』(テレビ朝日系)、『Believe -君にかける橋-』(テレ朝系)など木村拓哉の主演作を多く担ったことでも知られている。

なかでも夏になると見たくなるのが2005年放送の『エンジン』(フジ系)。夏らしい疾走感あるストーリーに加えて、『VIVANT』主演の堺雅人が木村拓哉と対峙する役を演じていた。あらためてどんな作品だったのか、ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。

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物語の舞台と登場人物

物語はF3000のレーサー・神崎次郞(木村拓哉)がチームを解雇され、ヨーロッパから5年ぶりに帰国するところからスタート。しかし、実家に戻ると父・猛(原田芳雄)が教師を辞して児童養護施設「風の丘ホーム」を開設していた。

そこにいたのは姉・ちひろ(松下由樹)、保育士・水越朋美(小雪)と鳥居元一郎(堺雅人)、調理師・牛久保瑛子(高島礼子)、12人の子どもたち。次郞はレーサーとして再起を目指す一方で、不器用ながらも子どもたちと向き合い、影響を与え合っていく……。

重い設定を跳ね返す井上由美子の筆力

「風の丘ホーム」の子どもたちは「父親の借金で一家離散」「母親が恋愛依存」「親が犯罪者」「母親から暴力」「生まれてすぐゴミ箱に捨てられた」「一家心中の生き残り」などの過酷な過去を抱えていた。児童養護施設が舞台のドラマは『明日、ママがいない』(日テレ系)、『明日の光をつかめ』(東海テレビ・フジ系)などのように重いムードになりがちだが『エンジン』はそれが少なく、むしろ痛快さを感じるシーンも目立つ。

このあたりは大学病院の闇を描いた『白い巨塔』しかり、中学生の妊娠を描いた『14歳の母』しかり、主婦と教師の不倫を描いた『昼顔』しかり、ホストと教師の恋愛を描いた『愛の、がっこう。』(フジ系)しかり、犯罪被害者の支援を描いた『さよならノワール』しかり。怒り、悔しさ、寂しさなど負の感情に終わらせない井上の人物造形と心理描写のうまさによるところが大きく、重さに引っ張られずに見続けられる。特に『エンジン』はつらい過去を抱える子どもたちが、次郞に本音を吐露することで前を向いて歩き出すシーンが感動を誘った。

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