2026年上半期のテレビ界は、スポーツ中継の放映権問題、若年層のテレビ離れ、番組作りをめぐるコンプライアンス、放送ビジネスの転換、長寿番組の区切りなど、テレビの現在地を映すニュースが相次いだ。
WBC地上波中継なし、W杯高視聴率…スポーツ中継の分岐点
上半期のテレビ界で最も大きなテーマの一つとなったのが、スポーツ中継のあり方だ。3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、日本での地上波テレビ中継がなく、Netflixによる独占ライブ配信という形で実施された。大会の中継映像制作は日本テレビが一部を受託し、地上波では関連特番などで盛り上げる形となったが、民放連トップからは、従来大会に貢献してきたテレビ局への影響や視聴率低下に対する危機感も示された。
この流れを受けるように、5月にはスポーツ庁と総務省が「スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会」を開催。放映権料の高騰、有料配信サービスによる独占配信の広がりの中で、国民がスポーツを観る機会をどう確保するのかが議論された。
一方で、6月のFIFAワールドカップ2026北中米大会では、日本代表戦が早朝・深夜や昼の時間帯にもかかわらず高視聴率を記録。15日早朝の「日本×オランダ」はNHK総合で世帯27.1%、21日昼の「日本×チュニジア」は日本テレビで世帯30.2%、26日朝の「日本×スウェーデン」はNHK総合で世帯35.0%をマークした(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。地上波で国民的スポーツイベントが放送されると、今なお大規模な同時視聴を生み出す力があることも証明された。
20代の7割が平日ほぼ見ず…若年層の「テレビ離れ」鮮明に
6月、NHK放送文化研究所が発表した「2025年国民生活時間調査」も、テレビ界に大きなインパクトを与えた。調査した平日に15分以上リアルタイムでテレビを視聴した人の割合は、16~19歳で27%、20代で33%にとどまった。高齢層では依然としてテレビの存在感は大きいが、50代、60代、70歳以上でも前回調査から低下。長くテレビ視聴を支えてきた中高年層にも変化が広がっていることが見えた。
ただ、テレビ視聴時間そのものは全体で増えている。70歳以上の視聴時間が増加しているためで、テレビが高齢層にとって強いメディアであり続けていることも示された。つまり、テレビが一気に消えているわけではない。世代によって接触の濃淡が大きく分かれるメディアへ変化しているのだ。W杯の高視聴率と、若年層のリアルタイム視聴低下。この2つが同じ6月に示されたことは、2026年上半期のテレビ界を象徴している。
フジ、新企業理念とSBI提携協議 改革フェーズ続く
フジテレビをめぐる動きも、上半期を通じて大きなテーマだった。5月には、新たな企業理念を発表。かつて同局を象徴した「楽しくなければテレビじゃない」について、これに代わるものではなく「自らに掲げる誓い」とし、「その楽しさは、何のためにある?」という問いを掲げた。行動規範には「楽しさを、はき違えるな」「楽しさで、誰かを傷つけるな」といった言葉が並び、番組作りと組織風土をどう変えていくのかを示すものとなった。
さらに6月には、フジ・メディア・ホールディングスがSBIホールディングス、SBIネオメディアホールディングスと、メディア・コンテンツ領域における戦略的資本業務提携に向けた協議・検討を開始すると発表。コンテンツへの共感・信頼・熱狂を起点にした“感情経済圏”の共同構築を目指すと説明した。改革は、番組内容だけでなく、組織、企業理念、資本戦略まで広がっている。
『イロモネア』『ナイトスクープ』『ザ・ノンフィクション』…番組協力者への誹謗中傷問題
1月は、番組に協力した一般人への誹謗中傷をめぐるニュースが相次いだ。年末に放送されたTBS系『ザ・イロモネア』の放送画面をSNSに違法アップし、一般審査員を誹謗中傷する投稿があったことから、番組ホームページで注意喚起のコメントを掲載した。芸人が一般審査員を笑わせるという同番組の仕組みは、性善説に支えられて成立してきた面もある。しかし、放送画面が切り取られ、SNS上で個人攻撃の対象になり得る時代になったことで、番組と視聴者の関係性そのものが問われることになった。
ABCテレビ『探偵!ナイトスクープ』では、6人兄妹の長男の小学生から寄せられた「1日だけでも次男になりたい」という依頼をめぐり、放送後に“ヤングケアラー”論争が発生。SNSでは両親への誹謗中傷が相次ぎ、同局の社長が「取り上げ方についてはデリケートで慎重な対応が必要だった」と謝罪した。
6月に行われたフジテレビ『ザ・ノンフィクション』の公開セミナーでも、SNS時代におけるドキュメンタリー制作の難しさが語られた。大きな反響を呼んだ「婚活」シリーズでは、心ない言葉が取材対象者に直接届き、深く傷つくケースもあったという。制作側は、取材前にSNSで攻撃されるリスクを説明し、放送後も対象者の心のケアを考えているというが、一般人を深く取材するドキュメンタリーは、ますます難しい時代に入っている。
番組に出る一般人をどう守るのか。SNS上の反響を前提に、取材、編集、放送後のフォローまで含めてどこまで責任を持つのか。2026年上半期は、テレビ番組が一般人を取り上げることの重みが、改めて浮き彫りになった。
『あのちゃんねる』終了 暴露ネタのリスク浮き彫りに
5月には、テレビ朝日が、あのの冠バラエティ番組『あのちゃんねる』を6月15日の放送をもって終了すると発表した。背景には、「嫌いな芸能人」を問う企画が放送され、番組側が謝罪した一連の騒動があった。あの自身もX(Twitter)で、以前から番組内容の改善を求めていたことを明かし、降板の意向を示していた。かつてのテレビでは、タレント同士の因縁や毒舌、暴露が“ネタ”として処理される場面も多かった。しかし、現在は切り抜きやSNS拡散によって、発言の文脈が失われ、当事者や関係者への攻撃につながるリスクが格段に高まっている。タレントの個性をどう生かすのか。攻めた企画とコンプライアンスの線引きをどこに置くのか。『あのちゃんねる』終了は、令和のバラエティ番組作りに大きな問いを投げかけた。
ロケ事故、内部情報流出…制作現場の管理体制に課題
上半期は、番組制作の現場管理をめぐるニュースも相次いだ。テレビ東京は3月、バラエティ番組『旅バラ・バス VS 鉄道乗り継ぎ対決旅』のロケで、出演者の前園真聖が負傷したと発表した。番組内のゲーム企画をめぐって出演者サイドが危険性を指摘していたことも明らかになり、旅番組やロケバラエティにおける安全管理が改めて問われることになった。
4月には、日本テレビ系情報番組『ZIP!』のスタッフとみられるSNSアカウントが、シフト表や入構証の写真などの内部情報を流出させたことが問題に。日テレの福田博之社長は、流出元が外部の新人スタッフだったことを明かし、情報漏えい研修を実施していたにもかかわらず事案が起きたことについて、局としての責任に言及した。出演者やスタッフの安全をどう守るのか。番組に関わる情報をどこまで徹底して管理できるのか。華やかな番組の裏側で、制作現場の基本的な管理体制が改めて問われた半年でもあった。
BS4K5局、NHKラジオ第2が終了 放送サービス再編へ
3月から4月にかけて、放送サービスの終了をめぐるニュースも続いた。BS民放5社の4K放送については、BSテレ東、BSフジ、BS日テレに続き、4月にはBS-TBSも終了を発表。これにより、民放キー局系BS5局すべてが4K放送を終了することになった。総務省の有識者会議では、BS民放5社の4Kコンテンツについて「費用回収が不可能な状況」と指摘されており、今秋からはWOWOWオンデマンドで4Kコンテンツを無料配信する形へと移行する。
また、NHKラジオ第2放送も3月30日で95年の歴史に幕を下ろした。経営合理化を目的にラジオをAMとFMの2波に再編するためで、教育番組などは移行される一方、長く続いた『株式市況』も終了した。“放送波を持つこと”そのもののコストと価値が問い直される時代に入っている。
長寿番組に相次ぐ区切り 『ミヤネ屋』『鉄腕DASH』『朝生』『笑点』
2026年上半期は、長寿番組の節目や区切りも目立った。2月には、読売テレビ・日本テレビ系『情報ライブ ミヤネ屋』のMC・宮根誠司が、9月末での番組終了を生放送で発表。今年7月末で放送開始20年を迎える、関西発の全国ネット情報番組の大きな区切りとなる。
日本テレビ系『ザ!鉄腕!DASH!!』では、元TOKIOの松岡昌宏が番組降板を発表し、城島茂は出演継続を表明。6月の放送1,000回SPは、城島に加え、横山裕、森本慎太郎、藤原丈一郎、松島聡、高地優吾という現メンバーが勢ぞろいして迎えた。
4月には、BS朝日『朝まで生テレビ!』が、事前収録の1時間番組に縮小。1987年から続いた“朝まで”“生”というスタイルは大きく変わった。一方で5月には、日本テレビ系『笑点』が放送60周年を迎え、生放送スペシャルなどの企画を展開。出演者が交代しても、座布団、テーマ曲、司会者と回答者の掛け合いという基本形を守り続ける強さを見せた。変わらなければ続かない番組と、変わらないから続く番組。その両方が見えた半年だった。
嵐ラストライブ、テレビではなく配信へ
5月31日、嵐が東京ドームでラストツアー『ARASHI LIVE TOUR 2026「We are ARASHI」』最終公演を開催し、グループとしての活動を終了した。同公演は有料生配信で届けられ、ファンクラブ会員だけでなく一般向けにも視聴チケットが販売された。平成から令和にかけて、テレビとともに国民的存在となった嵐。しかし、そのクライマックスは、テレビの音楽番組ではなく、ライブと配信というメディアを選んだ。
一方で、ラストライブの生配信を告知するテレビCMは、各局で大量に放送。テレビは最後の舞台そのものではなく、配信へ人々を導く巨大な告知装置として機能した。テレビと国民的スターの関係が変化したことを象徴する出来事だった。
久米宏さん、ガッツ石松さん、中村玉緒さん、美輪明宏さん…テレビを彩った人たちとの別れ
上半期は、テレビ史に大きな足跡を残した人たちとの別れも相次いだ。1月には、『ぴったしカン・カン』『ザ・ベストテン』『ニュースステーション』などで司会を務め、テレビニュースと生放送のスタイルを変えた久米宏さんの死去が明らかになった。『報道ステーション』では『ニュースステーション』全盛期のオープニングを再現し、約40分にわたって特集を組むなど、“テレビニュースを変えた男”に賛辞を送った。
6月には、元プロボクサーでタレントとしても活躍したガッツ石松さん、俳優の中村玉緒さん、歌手・俳優の美輪明宏さんの訃報が続いた。ガッツさんは「OK牧場」に象徴される明るいキャラクターでバラエティでも親しまれ、中村さんは明石家さんまらとの掛け合いでお茶の間に愛され、美輪さんは歌、舞台、映画、ナレーション、トーク番組まで横断しながら、独自の言葉と美意識をテレビにも刻んだ。



