NHK ONE開始1年、登録は契約総数の11%どまり 井上会長がPR強化を表明
NHK ONE開始1年、登録は契約総数の11%どまり 会長PR強化

NHKのインターネットサービス「NHK ONE」が開始から1年を迎えた。登録アカウント数は順調に増えているが、受信契約総数全体の約11%にとどまる。テレビ離れ対策として期待される「ONE利用のみの受信契約」も目標値に届いておらず、井上樹彦会長は21日の定例記者会見で「ONEがこれだけ便利で、これだけのコンテンツ量があるんだというPRがまだまだ足りない」と述べた。

開始1年、登録は契約総数のわずか11%

放送法改正で、番組の同時配信や見逃し配信、ニュース記事などの番組関連情報の配信がNHKの必須業務となったことを受け、昨年10月からONEがスタートした。受信契約者向けの動画配信サービスだった旧NHKプラスにニュースサイトなどを統合し、利用時には受信契約が求められる。地上波の総合とEテレの番組を配信しており、契約済みのテレビ所有者は新たな契約は不要だ。テレビを持たない人でも独自に契約すれば、地上契約と同額の月1100円で利用できる。

旧プラス時代からネット接続テレビで利用している立場からすると、定時ニュースを生活時間に合わせて自由に見られる点は便利だ。ONE開始以降、放送時間中でも冒頭から視聴できる機能が搭載され、使い勝手が増した。見逃し視聴中でも大きなニュースや震度3以上の地震速報が随時画面表示されるのも小技が効いている。リアルタイム視聴でないため、興味のないニュースを飛ばせるのもストレスがない。ただ、見たい番組にたどり着くまでにリモコンを押す回数がやや多い気もする。

9月末現在、契約確認済みアカウント登録数は456万件。旧プラス時代の登録アカウント数は668万件で、今月21日の定例記者会見で山名啓雄副会長は「旧サービスを利用されていた多くの方に引き続き利用していただいているほか、新たに利用を始める方も着実に増えており、堅調に推移している」と述べた。井上会長も「ヘビーユーザーの数に近付いている」と評価した。

とはいえ、放送と同等の必須業務である以上、ネット利用者にも幅広くONEを利用してもらう義務がNHKにはある。受信契約総数4019万件(6月末現在)のわずか11%しか登録されていない。当初に比べ登録ペースは鈍化しており、放送と同様に利用されているとは言い難い。

大スローガン「下げ止まり」

NHKの台所事情を考えるなら、よりシビアに受け止めねばならない数字がある。テレビを持たずONEのみで新規契約してくれている人がどれくらいいるかだ。

23年10月の受信料1割値下げにより、NHKは27年度までの4年間で1000億円の支出削減を迫られ、24~26年度は赤字予算を編成。27年度の収支均衡を目指している。最近では若い世代を中心にテレビを持たない人が増え、思うように新規契約が確保できない。その結果、解約数の方が上回り、23年度以降は契約総数が毎年、前年度末より30万~40万件減少。今年度も6月末時点で既に14万件減っている。

契約総数の減少は受信料収入にも影響し、いずれも「下げ止まり」がNHKの大スローガンとなっている。そこで期待されるのが、テレビを持たない人々をONEを通じてどう取り込み、契約につなげるかだ。これまでならテレビの所有が受信契約義務発生の条件だったが、昨年10月以降はONEを利用した場合にも契約が必要となった。

テレビ離れ時代の新たな財源となりそうだが、現実には契約してもらうのは容易でない。「テレビを持たずにONEのみを利用している契約者の数は正確に把握するのは難しい」と山名副会長は前置きした上で、契約時の利用機器が「ネットのみ」と申告した契約者は8月末時点で1万3000件であることを明かした。

若年層と「切れてしまうわけにいかない」

開始当初、ONEのみの契約者目標は25年度下半期に1万2000件、26年度に2万4000件、つまり1年半で3万6000件程度になるともくろんでいた。単純比較すると、現状は目標の半分程度のペースで推移している。テレビを持たない選択をした人の中には、番組を見なくても契約義務を迫ってくるNHKに「NO」を突きつけている人も多く、契約を求めるのは容易ではない。「下げ止まり」の一助になるとは言いづらく、財源確保の土台となっている受信料制度自体が限界となっているような気もする。

この点、井上会長は「テレビがないからNHKを見ないという人に見てもらうために、ネットの拡大戦略をやっている。確かに20代、30代のテレビの保有率は減っていますが、それでNHKと(の関係が)切れてしまうわけにはいかないんです。我々は公共メディアとしてコンテンツも情報も自信を持って送り出している。こうした人たちにもNHKの価値、公共メディアの価値を伝えたいわけなんです」と強調。「まだ目標値に届いていないので、さらにPRを強化していく。(契約)手続きが煩雑との声もあるので、そこも簡略化していく。それにより、テレビではなかなか接触できない新しい世代にアピールし、スマホ、ネットを使ってつながっていきたい。今の受信料制度の中で、どうやって顧客を広げていくか、特に若い世代にどう広げていくか。ONEはそのための一つの重要な柱なんです」と訴えた。

実際、ONEでは、現在提供しているニュース・防災、教育、医療・健康、福祉のページに加え、今月からは教養番組のページが開設され、歴史や自然、戦争と平和をテーマにした番組関連情報の配信をスタート。「映像の世紀 バタフライエフェクト」「ダーウィンが来た!」といった過去番組を約5~15分の動画に再編集して順次提供し、スマホを利用する若年層にも突き刺さりそうなコンテンツを並べていく。

鳴り物入りで始まった新サービスだが、2年目に入り、「下げ止まり」というNHKの悲願がテレビを持たない人々に通じるか、受信料制度の行方も含め、正念場を迎える。