フランス文学者・明治大学教授の鹿島茂氏は、『世は〆切』という山本夏彦の警句にならい、「世は口実」という言葉を提唱している。本音は「この女とセックスしたい」でも、「歌舞伎を観に行こう」と口実を設ければ、やましさを感じずに二人きりになれる。誘われる側も「伝統芸能に触れたいだけ」と言い訳でき、「不本意ながら要求を呑む」ポーズを取れるという。
本音主義への疑問
鹿島氏は、昨今は本音で生きることが美徳と考える人が少なくないが、それは間違いだと指摘する。口実を設けることで、相手も自分も気まずくならずに済むユーモアレトリックの重要性を説いている。


