金沢市を拠点に活動する劇団アンゲルスは、今年で創設30年を迎えた。地域に住みながら世界レベルの舞台を目指す劇団として、世界各地で上演を続けている。創設者で演出家の岡井直道代表(79)に、演劇への思いや歩みを聞いた。
演劇の道へ
岡井代表は金沢市出身。金沢泉丘高校では柔道部に所属し、演劇とは無縁だった。受験勉強の合間に見た金沢大学のサークルによるドイツ演劇に感激し、金沢大学入学後は演劇に没頭した。卒業後に上京し、俳優教室を経て劇団「東京演劇アンサンブル」(埼玉県)に入団。演出家の道を歩み始めた。京都の劇団にも在籍し、アメリカや韓国など海外でも仕事をした。
地元での劇団創設
文化庁の事業で1992年にドイツ・ベルリンに1年間派遣されたが、帰国直後にステージ3の胃がんが見つかった。手術を受けて体力が低下し、金沢の実家に戻った。療養のために地元に戻ったはずだったが、金沢市民芸術村開設に合わせた劇団創設の話を持ちかけられ、1996年に劇団アンゲルスを主宰することに。旗揚げ公演はシェークスピアの「マクベス」で、役者やスタッフは職業も様々な10~70歳代の約40人。衣装も着物を持ち寄ったり、繊維工場から布をもらったりしてそろえた。
演劇を続けるには居場所が必要だったため、芸術村近くの長屋を借り上げて稽古場に。皆で下板を張って白壁を塗り、手作りの劇場を作り上げた。
世界での上演
これまでにルーマニアやウクライナ、ロシアなどの演劇祭で上演してきた。岡井代表は「創造的に生きたい人は地方にもたくさんいる。ただ、演劇を仕事にしたい人は東京や大阪といった大都市に出てしまう。その現状が悔しかった」と話す。「アンゲルスは海外公演ができる環境だ。地方で世界レベルの作品を作らなければ、演劇は中央集権的な商業主義に陥る」と語る。
若い才能の活躍
劇団は今、変化の時期を迎えている。少数精鋭の6人で活動し、週に3、4日の稽古に励んでいる。岡井代表は年を重ね、多くの作品を作れなくなった中、昨年、劇団員の木林純太郎さん(29)が初めて演出を務めた。「うれしくなった。この劇団は僕1代で終わって良いと思っていたが、若い世代を中心につないでくれるだろう」と期待を寄せる。
9月に韓国で公演
劇団アンゲルスは9月、韓国・春川市で、パレスチナ自治区ガザの状況を描いた舞台「ノット・ア・ナンバー」を、現地の劇団と共同で上演する。原作はガザ出身の作家アーティフ・アブー・サイフさんの「ガザ日記 ジェノサイドの記録」(地平社)。演出を担当する木林純太郎さんが台本化し、昨年9月に金沢市で上演した。
今回共同制作するのは、春川市で活動する劇団「DOMO」。今月15、16日に金沢市民芸術村でアンゲルスのみで公演し、9月4、5日に韓国でDOMOと共に公演する予定だ。



