映画「左利きの少女」、台北の夜市で生きる母娘の葛藤と軽快な語り口
映画「左利きの少女」、台北の夜市で生きる母娘の葛藤

台北の夜市で人生を再出発させたばかりの母娘3人家族を描く映画「左利きの少女」が、ヒューマントラストシネマ有楽町などで公開中だ。台湾に一度でも行ったことがあるなら、街のあちこちに設けられた夜市に足を踏み入れたことがあるだろう。台湾人のエネルギーが凝縮した、にぎわいあふれるマーケット。本作は、そんな夜市を舞台に、偏見や因習と葛藤しながら生きる家族のリアルを軽快に描く。

台北の夜市で再出発する母娘3人

冒頭から台北の街の風景に心をつかまれる。5歳の少女・イージン(ニーナ・イエ)と、10代の姉・イーアン(マー・シーユエン)、そしてシングルマザーのシューフェン(ジャネル・ツァイ)が、故郷の台北で生活を立て直すために戻ってくるシーンだ。忙しく道を行き交うスクーターや自動車。すすけたビルが立ち並ぶ街並みといった、台北を訪れる誰もが見る光景が、生き生きと提示される。が、ここから先は、旅行者では見ることができない、彼女たちのリアルの世界――。

母は夜市の一角を借りて屋台を始めるが、イーアンは何かにつけ母と衝突し、新生活は前途多難だ。幼いイージンは夜市での日々を無邪気に楽しんでいたが、ある日、祖父に左利きであることを見とがめられ、「左手は悪魔の手だ」と叱られてしまう。日本でも、最近はあまり聞かないが、左利きを右利きに矯正することはある。そんな考えが台湾にもあるというのが興味深い。

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左利きを巡る偏見と家族の葛藤

物語は徐々に、この島の文化に残る偏見や因習との間で、彼女たちが葛藤する姿を描き出す。そもそも3人が台北に戻ってきたのは、シューフェンが別れた前夫の借金を肩代わりし、生活が立ちゆかなくなったため。イーアンが露出度の高い服装でビンロウ店で働いているのも、母の離婚のせいで進学を諦めることになったからだ。そして、イージンも左利きであることに罪の意識を抱えてしまう。夜市のざわめきの片隅で、人生に落ちる影は長く尾を引く。

つい辛気くさくなってしまいそうだが、決してそうならないのが、この作品の魅力。何より、物語が軽快だ。特に結末に向けての「ひねり」には、きっとやられるはず。そして、撮影にはiPhone(アイフォーン)が使われている。気取りがなく、視点も自由な映像は、登場人物の息づかいを身近に感じさせてくれる。

ショーン・ベイカー監督がプロデューサー

監督のツォウ・シーチンは、国際映画祭などで高い評価を受けた「ANORA アノーラ」のショーン・ベイカー監督の共同制作者としても知られ、今回はベイカー監督がプロデューサーとなっている。ポップで生々しい物語は、どこか彼の色も感じさせる。(読売新聞文化部 浅川貴道)

「左利きの少女」(台湾、仏、米、英)は、ヒューマントラストシネマ有楽町などで公開中。上映時間は1時間48分。

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