人気漫画『北斗の拳』は、当初「見切り発車」で始まった連載だった。原作者の武論尊さんが、作品誕生の経緯や連載開始当初の状況を振り返った。
読み切り作品から始まった連載
『北斗の拳』は、昭和58年、新人漫画家の作品を多く取り上げていた集英社の漫画誌「フレッシュジャンプ」に向けて、原哲夫さんが1人で描いた読み切り作品が最初だった。登場する主人公、ケンシロウの名前や顔、北斗神拳という拳法名は同じだが、時代や舞台は現代の都会で、ストーリーも全く違うものだった。その後、「週刊少年ジャンプ」の原さんの担当編集者、堀江信彦さんから「組んでみないか」と声がかかった。
武論尊さんは、カンボジアから帰って、滅ぼされそうな国についての漫画を書いたが、少年誌では無理だということで、すぐ10回で打ち切りになったという。もんもんとしているときに『北斗の拳』の話が来た。原さんの連載を始めるにあたり、ストーリーのアシストがいるだろう、原作者を付けようということになったと話す。
時代設定変更と「見切り発車」の連載
作品が面白かったので、「やりますけれども、時代を変えていいですか。それだったらやります」という話になった。近未来だったら書けるかな、というかたちで。カンボジアの惨状を見てきたこともあるし、はやっていたオーストラリアの映画『マッドマックス2』の世界観が映像的にあったので、その世界だったら面白く書けるかな、って始まった。1回目の原先生の絵ができた瞬間に、「あ、これ当たるかもしれない」と思ったという。
内容は「見切り発車」だった。とりあえず1回目はその拳法の面白さと、それをどうやって引き出すかっていうのを重点的に書いた。連載だから次も書かなきゃいけないが、とりあえず1回目どんなもんかなーって思ったら手応えがあった。あ、これはいけるかなという感じで、あんなに当たるとは思ってなかったという。
物語の核心は後から決まった
1回目を書いたときは(恋人の)ユリアも(ユリアを奪った)シンも考えていなかった。2回目、3回目に進んだときに、ところでケンシロウは何で旅をしてるんだって話になって、そこから考えることになった。一緒になって考えるのは原先生でなく、(出版社の)担当だ。やっぱり女を追いかけているんだろうな、って話になる。じゃあ誰が奪ったんだ、そのキャラクターを決めよう、となった。どうしましょうかと聞いてみると、「それを決めるのはお前だろ」って言われたという。
ストーリーを考える場所は、うちの仕事場だ。居酒屋とかではない。終わった後に居酒屋に行ったりはするが、打ち合わせをするときは割と、酒もなしでまじめにコーヒーでやってた。うまいこと2人で話が転がったときには、1時間も話せば「じゃあ任せる」ってなるが、新しいシリーズが始まるときはものすごく時間がかかる。そのときは1日ぐらいずっと話してる。そのあと書くのは私なので、担当は「お願いします」って帰ってしまう。でもとりあえず一仕事終われば、よく一緒に飲んでたという。



