手描き友禅という日本の伝統染色技法に、ハワイアン柄という異色のモチーフを融合させた女性がいる。equboさんは、趣味で始めた友禅がいつしかライフワークとなり、伝統産業の未来を憂うまでになった。彼女の挑戦は、着物に馴染みのない層にもその魅力を届けようとするものだ。
日常の延長にあった友禅との出会い
equboさんは当初、手描き友禅を学ぶには京友禅や加賀友禅の工房に弟子入りするものと思い込んでいた。しかし、友人に連れられて訪れた教室は、普通の主婦や会社員が自分用の着物や小物を染める場だった。この教室は、日本文化を大切にしていた先代の住職が開いたお稽古の一つで、江戸友禅(東京友禅)の流れをくむ手描き友禅作家が直接指導していた。「こんなふうに、普通の人が友禅を学べる場所があるなんて、思いもしなかったです」とequboさんは振り返る。
フラダンスとの偶然の出会い
友禅に夢中になる一方、equboさんはもう一つの趣味に出会う。母が日本舞踊のボランティア慰問をしており、着付けを手伝ううちに「人を楽しませる側になりたい」と思うようになった。ある日、帰り道に偶然見つけたフラダンスの看板。軽い気持ちで教室を訪れると、そこでは優雅なフラではなく、祈りや儀式性を感じさせる古典フラが踊られていた。先生は踊りだけでなく、ハワイの文化や精神も教えてくれるという。「先住民の自然を尊ぶところや、身の回りのものすべてを丁寧に扱う価値観は、どこか日本と通じる」とequboさんは語る。フラを覚えれば慰問もできると考え、手描き友禅教室と並行してフラの教室にも通い始めた。
8年の歳月を経て講師に
仕事をしながら二つの教室に通い続け、手描き友禅のコースは上級へ。通い始めて8年、友禅講師の免状を手にした。「ちゃんと通える人なら6年くらいで取得できるんですよ。私は仕事をしながらでしたし、結婚とかいろいろあって、途中お休みもしていたから8年もかかっちゃいました」と笑う。
伝統の枠を越える決意
基礎科を終え、独自の作品を作る段階になると、教室では作品展への出品が課せられた。東京の百貨店で行われる作品展では、帯や着物に値札が付けられ販売される。ありがたい場だったが、何度か出展するうちにequboさんは気づく。「お客さんはそれなりに来てくれていたのですが、年齢層が高いなと。それに、もともと着物が好きな人でないと友禅展には来ませんよね。このままでは、友禅は産業としては衰退してしまうんじゃないかという危機感を覚えました」。
技術を守るには作品が売れることも重要だ。どうしたら友禅から遠い人々に魅力を発信できるか。趣味で始めた友禅だが、産業や着物業界の未来まで考えるようになった。同時に、「自分にしか描けないもの」を追求したいという思いも強まった。当時は会社員として働きながら友禅を続けており、なかなか自分らしさは見つからなかったが、そんな折、横浜シルク博物館で運命の出会いを果たす。「アロハシャツの特別展が開かれていたんです。これがもう衝撃でした」。
ハワイアンと友禅の融合
アロハシャツの鮮やかな色彩やモチーフにインスピレーションを受けたequboさんは、ハワイアン柄を友禅に取り入れることを決意。フラダンスで培ったハワイ文化への理解も背景に、従来の着物のイメージを覆す作品を生み出している。彼女の作品は、着物に興味のない層にもアピールし、新たなファン獲得を目指す。伝統を守りながらも、枠にとらわれない挑戦は、友禅の未来に一筋の光を投げかけている。



