スモーキングルーム第294回:煙とザックの雨上がりの朝の散歩
スモーキングルーム第294回:煙とザックの雨上がりの散歩

「それじゃ、謹慎じゃない」――砂糖煮の娘は、煙がホテルにこもりきりなのを見て呆れたように言った。「ねえ、銀のパパ、せめて散歩でもしたら? それか、ザックの発掘の手伝いはどう? なんにせよ、ホテルの中にいたら休めないわ」と、半ば無理矢理に外へと追いだした。

週一度の散歩が始まる

そうして週に一度、湖の周りや森をザックと散歩する煙の姿が見られるようになった。煙はホテルからあまり離れたがらなかったが、時折ザックについて大河の方へと遠征もした。石ころが入った荷物を運ぶのは手伝ったが、手や爪が傷むのを気にする煙は土を掘ることはせず、いつもザックだけが汚れて帰ってきた。「どちらがお姫様かわからない」と従業員たちは笑ったが、ザックは気にする素ぶりもなかった。

雨上がりの朝の出来事

夜に大雨が降ると、ザックはまだ暗いうちに起きだす。砂糖煮の娘を起こさないように準備をして、忍び足で従業員用階段を下り、厨房へ向かう。厨房の裏口の前に煙が佇んでいた。古めかしい狩猟用の外套(ローデンコート)を着て、バスケットを持っている。「おはようございます」と静かに言う。

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「早いね」と驚くザックに、「雨上がりの朝、貴女(あなた)はいつも早く出ていきますから」と煙は答えた。「休日なので、ご一緒してもよろしいでしょうか?」と問う煙に、ザックは「もちろん」と弾んだ声で言った。「でも、ピクニックはしないよ」。「存じております」と煙は微笑んだ。

渓谷での朝食と紅茶

ザックは森を抜け、渓谷へと向かった。土砂崩れで剥きだしになった地層を見つけて目を輝かせるザックに、煙は「まずは朝食を取りましょう」と紙で包まれたサンドイッチを差しだした。ザックは食べている間もずっと地層に目を凝らしていた。

その姿を眺めながら、煙はバスケットから湯が入った水筒を取りだし、琺瑯(ほうろう)のマグカップでティーバッグの紅茶を淹れた。砂糖煮の娘が作った薔薇(ばら)のジャムを溶かしながら、くすりと笑う。ザックが素早く振り返った。「甘い紅茶はお嫌いですか?」「そうじゃなくて。あなたが声をだして笑うのはめずらしいなと思ったの」

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