貧困と格差に迫る舞台「TOKYO SLUM」、中津留章仁が人間の根源を掘り下げる
貧困と格差に迫る舞台「TOKYO SLUM」、中津留章仁が人間の根源を

劇作家・演出家の中津留章仁が主宰する劇団トラッシュマスターズが、新作舞台「TOKYO SLUM」を7月30日から8月9日まで東京・上野ストアハウスで上演する。現代社会に潜む貧困と格差に迫り、人間の幸福とは何かを問いかける意欲作だ。

都庁前のフードサポート行列が発端

中津留は作品の発端について、「東京都庁前のフードサポートに普通の若い子が行列していると聞いて、仕事をしていても貧しいと感じる若者が増えているのかなと感じた」と語る。この光景が、物語の核となる。

主人公は35歳のソラ(倉貫匡弘)。人材派遣会社に勤めるサラリーマンで、食費を浮かすため都庁前の行列に加わる。彼が工場に送り込んだ派遣社員の由美(井場景子)は、最近遅刻が多く問題となる。由美は認知症の母と暮らしており、母は要介護2で特別養護老人ホームに入居できず、介護サービスも収入の制限で十分に利用できない。その結果、母の夜間徘徊が心配で慢性的な寝不足に陥っている。

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制度の隙間と個人の事情

現行制度では救われない人々に寄り添うソラは、人材不足なら補充して数を揃えればいいと考える会社代表の三田村(神野崇)と対立する。さらに、ソラの元上司で工事中の新宿駅西口バスターミナルの警備員隊長(佐藤礼菜)や、周辺にたむろするホームレスたちが絡み、ドラマが展開する。

中津留は従来の劇団の作風との違いをこう説明する。「今までだと政治が悪いでしょっていう話になるが、今回は人間に合わせて会社の仕組み、ルールを変えていきましょうという話。ベクトルが政治に向かっていかない」。また、「これまでは国に変えてと言ってきたけど、今回は小さいコミュニティー単位で、自分たちでこういうルールなら作れるよね、という能動的提案になっている」と述べ、前向きな方向性を強調する。

中津留章仁の劇作家としての歩み

1973年生まれ、大分県出身の中津留は、2000年にトラッシュマスターズを旗揚げ。現代社会が直面する様々な問題の背景や深層を取材し、濃密な人間ドラマを構築してきた。東日本大震災後の被災地の現実を取材した「背水の孤島」(2011年)など、情報の詰まった重厚な作劇は現代演劇界で異彩を放つ。

近年は集客の難しさも感じており、「世の中が世知辛くなって、芝居を見ても世知辛い気分になりたくないのかなと思って」と語る。前作「わたしの町」に続き、本作も「前向きで、見やすい作りになっていると思う」という。「仕掛けも含め、人間の根源的なものを掘り下げ、それに触れていくせりふを書いている。おれの書き方って劇作家というより、昭和で言えば思想家みたいな感じなのかな」と自らの作風を分析する。

上演情報とキャスト

共演は長谷川景、小崎実希子、松田史朗、亀井幸代、伊藤俊輔、白瀬りか、山本亘。公演は7月30日から8月9日まで、東京・上野ストアハウスで。問い合わせは電話080-6145-3357。

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