漫画「釣りバカ日誌」の原作者・やまさき十三さん(85)は、半世紀近くにわたり作画を手掛ける北見けんいちさん(85)を「もはや自分の分身のような存在」と語る。二人はこれまで一度もけんかをしたことがないという。連載は昭和、平成、令和と三つの時代を超え、月2本のペースで続いている。
引き合わせた編集者と赤塚調の絵
二人を引き合わせたのは、小学館の編集者・林洋一郎さん(故人)。やまさきさんが仕上げたユーモアあふれる原作に対し、白羽の矢が立った北見さんは当時、赤塚不二夫さんのアシスタントを務めていた。「赤塚調の絵が合うと思ったのでしょう」と北見さんは振り返る。
原作は、釣りを愛する平社員のハマちゃんと、その弟子で実は社長のスーさんのコミカルな掛け合いが魅力。やまさきさんが手書きの原作をファクスで送り、北見さんが生き生きとしたタッチで描く。表現に相談があれば電話でやり取りする。このスタイルは40年近く変わらない。
セリフ変更も信頼、ラブシーンは「合体」
北見さんが原作のセリフを少し変えることもあるが、やまさきさんは「全部信じて任せています」と怒らない。また、北見さんはラブシーンを描くのが苦手で、やまさきさんのアイデアで「合体」の文字で表現するスタイルが生まれ、定番となった。
プライベートでも食事に行く二人は、互いに相手の分も払おうとしてもめることも。米大リーグ・大谷翔平選手の本塁打を電話で喜び合う仲だ。
互いへの感謝と編集者の評価
やまさきさんは「『あと5年、あと5年』と言い合いながらやってきたら、ぞっとするような年月がたっていた。北見さんには原作より、はるかに良い作品にしてもらっている」と話す。北見さんも「十三さんは誰かを楽しませようとするサービス精神があり、おおらか。生活を豊かにしてくれた恩人で家族」と感謝する。
連載当初の編集担当・黒笹慈幾さん(75)は「ここまで仲が良いのは稀有。風通しのよい関係も、作品が長続きしている要因だと思う」と評している。



