和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてから、2026年で10年を迎えた。この10年間で、海外における和食の人気は飛躍的に高まり、和食レストランの数は約15万店に達した。日本の農林水産物・食品の輸出額も2025年に過去最高の1兆5000億円を記録し、和食文化の国際的な広がりを象徴している。
海外で広がる和食、現地化する味
ニューヨークやパリ、ロンドンなどの大都市では、高級寿司店からカジュアルなラーメン店まで、和食の選択肢が多様化している。しかし、現地の嗜好に合わせたアレンジも進み、例えばアメリカではクリームチーズを使ったロール寿司が人気を集めるなど、伝統的な和食とは異なる形態も見られる。
日本政府は「真の和食」の普及を目指し、農林水産省が「和食文化継承プロジェクト」を展開。海外の料理人を日本に招いて研修を行うなど、本格的な技術や知識の伝承に努めている。農林水産省の担当者は「和食の核心であるだしの文化や、季節を感じる盛り付けなど、単なる料理ではなく、文化としての価値を伝えたい」と語る。
輸出拡大と国内産業への影響
和食ブームを背景に、日本酒や醤油、抹茶などの調味料や飲料の輸出も好調だ。2025年の日本酒の輸出額は1000億円を超え、10年前の約3倍に成長。醤油も海外での需要が拡大し、現地生産も進んでいる。
一方で、国内の和食産業は課題に直面している。少子高齢化による後継者不足や、伝統的な調理技術を持つ職人の減少が深刻だ。全国日本料理協会の調査によると、日本料理店の約3割が後継者不足を感じており、和食文化の国内での継承が危ぶまれている。
ユネスコ登録の意義と今後の展望
ユネスコ無形文化遺産への登録は、和食の文化的価値を国際的に認められた画期的な出来事だった。登録から10年が経ち、その意義は改めて問われている。文化庁の担当者は「和食が単なる食べ物ではなく、自然の尊重や季節感、行事との結びつきなど、日本人の精神性を反映したものであることを再認識する機会となった」と評価する。
しかし、専門家からは「登録の効果が一時的なブームに終わらないよう、持続可能な取り組みが必要」との指摘もある。和食文化の保護と継承には、国内外での教育や、伝統技術の記録・保存が不可欠だ。
2026年には、ユネスコ登録10周年を記念した国際シンポジウムが東京で開催される予定で、和食の未来について議論が交わされる。



