西武渋谷店が閉店、菊池武夫さんが語る伝説の売り場「カプセル」の記憶
西武渋谷店閉店、菊池武夫さんが語るカプセル売り場

東京・渋谷の百貨店「西武渋谷店」が今月末、58年の歴史に幕を下ろす。無名の若手デザイナーを発掘し、戦後の日本のファッションをリードしてきた同店について、「タケオキクチ」を創設したファッションデザイナーの菊池武夫さん(87)が、開業当初の思い出を振り返った。

「カプセル」売り場の誕生

1968年、西武渋谷店A館の中2階の小さなスペースに、新進気鋭のデザイナーを世に送り出した伝説の服飾売り場「カプセル」が誕生した。インテリアデザイナーの倉俣史朗さんが手がけた店内は近未来的な雰囲気で、透明のカプセル型ショーケースが並び、当時まだ知名度の低かった山本寛斎さんら有望株のデザイナーの服が展示された。

菊池さんもその一人で、当時東京・麻布十番にアトリエを構え、雑誌や映画、化粧品メーカーの広告の衣装などを手がける中、西武百貨店の社員の目に留まり出品することとなった。「アトリエでカプセル用に服を作り納品していた。服は一点ものに近かった」と振り返る。

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セレクトショップの先駆け

カプセルはセレクトショップの先駆けでもあった。百貨店がアパレル企業に売り場を貸す従来の方法ではなく、百貨店のバイヤーが売れそうなものを買い付けて販売した。ワンピースやスーツは仕立ててもらうのが主流の時代に、デザイナーの個性が強く表れた服を豊富に取りそろえていた。

「新しい時代を作るという機運を感じた。刺激的だった」と菊池さんは話す。ユニークだったのは売り場で開催されたショーで、デザイナー1人あたり数点製作し、代わる代わる披露した。ショーが終わるとモデルが着た新作が売り場に置かれ、観客はモデルの着こなしをそのまま購入していったという。

DCブランドの火付け役

カプセルはファッション感度の高い人が通い、流行を仕入れる場に成長した。「デザイナーにとってカプセルに服が置かれることは、特別感があった。自分のデザインに手応えを感じられた」という。

デザイナーの名前や世界観が前面に出たブランドは、後に「DCブランド」と呼ばれ、70年代後半から80年代にかけてブームとなった。その火付け役も西武渋谷店だった。イヴ・サンローランやエルメスといった海外ブランドも日本に導入した。

菊池さんは「時代の流れは速い。新しいことに挑戦しながら存在し続けるのは難しい。閉店はさみしいがどうにもできない宿命なのでしょう」と語った。

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