季節のフルーツを宝石のようにちりばめたパフェ「パルフェビジュー」で知られるパティシエールの岩柳麻子さん(48)がこの夏、旬の桃を使い尽くす懐石料理のようなフルコースを初めて披露した。ステーキも織り交ぜ、甘味だけではない桃の魅力を引き出した。
桃づくしのフルコースを高輪の新店舗で披露
東京都世田谷区に本店を構える「パティスリィ アサコ イワヤナギ」は、全国からファンが足を運ぶスイーツの名店。岩柳さんが手掛けるパルフェビジューは完全予約制で月に2回、新作が登場し、季節によっては1万円近い価格になることもあるが、すぐに予約が埋まる。
8月、桃が旬を迎える中、岩柳さんは桃づくしのフルコースを東京・高輪の新店舗で披露した。使用したのは福島県産の桃「まどか」。福島は山梨に次ぐ全国第2位の収穫量を誇る。
農園訪問から生まれた6品のアイデア
7月、岩柳さんは福島市内にある農園を訪ねた。「まず、青々と葉が茂る中で淡いピンク色の実がなっている光景に引き付けられました」と振り返る。採れたてを口にすると、「かたいけれど糖度はしっかりと乗っている。私たちの手元に届く頃の完熟桃とは違ったおいしさがありました」という。
産地ではさまざまな品種が次々と収穫期を迎える。品種のリレーとも呼ばれ、早生から名残まで、個性豊かな味の食べ比べができたという。その感動をもとに岩柳さんは店で働くシェフらとともに、計6品のアイデアを練り上げた。
桃のステーキと締めのパフェ
「八寸」は「桃を多彩に楽しんでほしい」との思いを込めた。シロップで軽く煮た実をわらび餅に忍ばせ、農園から取り寄せた葉にのせて。焼いた桃はスペインの高級生ハムをまとわせ、うまみを重ね合わせた。
福島の郷土食であるキュウリを使ったかっぱ麺に添えたのは、乳酸発酵させた桃と昆布水を合わせたつけだれ。青梅に似た爽やかな酸味と、キュウリの風味が絶妙な相性を見せた。メインは桃をステーキに。粗びきコショウをびっしりとはり付けて焼き上げてチーズを合わせ、深みのあるポルト酒のソースでまとめた。
締めのパフェが運ばれると感嘆の声が漏れた。みずみずしい皮付きの桃、夕映え色の焼き桃、芳醇なソルベ…グラスの中で桃が異なる表情で重なり合う。スダチや大葉など和食材をアクセントに、ひとさじごとにハーモニーを奏でながらコースは終わりを迎えた。
「『やわらかくて甘い』だけではなく、合わせる素材、調理法によっておいしさを多様に広げる力が桃には詰まっている」と岩柳さん。JA全農福島東京園芸事務所の前田健吾所長(50)は、「桃のシーズンは9月いっぱいまで。家庭でも自由な味わい方で旬を最後まで楽しんでほしい」と呼びかけた。



