「ハムと本と、」に深い意味 大阪・池田の私設公民館が生む予期せぬ出会い
「ハムと本と、」に深い意味 大阪・池田の私設公民館

大阪府池田市の石橋商店街の路地を入った築約100年の民家に、「ハムと本と、」というプレートがかかる。珍しい名前には深い意味があるようだ。

運営する一般社団法人「いしばしコモンズ」の代表、菱田伊駒さん(36)は「そのままですね。フランスで修業したハム工房『ハム横山』さんと、書店『まがり書房』さんが入っているので」と笑いながら説明する。

「私設公民館」として8月にオープン

さまざまな人が集まる「私設公民館」を目指して、今年8月にオープンした。菱田さんは、社会と大学の連携のため石橋商店会と阪大の学生が設立した「石橋×阪大」の初期メンバー。大学卒業後も対話イベントやアートを通じ、学生や商店街、地域住民らの交流を深める活動に取り組んできた。

民家はイベントの際に利用してきたが、参加者らの「いつでも立ち寄ることができる場所になれば」という声を受けて整備を検討。「活動を回していくためにも、きちんと収益を上げることが必要」と、1階を店舗にすることを決めた。

書店選びの背景と新たな出会い

書店を選んだ理由のひとつは、石橋商店街の状況。4年前に最後の新刊書店が閉店した。「大学の近くだし、どうしてもセンスのいい本屋さんが欲しかったんです」と菱田さん。

池田市内の別の場所で、古書を中心に営業していた独立系書店「まがり書房」に選書を相談したところ、思いがけず、店ごと引っ越しが決まった。店主の小笠原克巳さん(57)は「前の場所で9年間、店を続けてきましたが、新しい場所で心機一転もいいかなと思って」と話す。

店に並ぶのは約1600冊。以前のファンに加え、「ハムを目的に来る方やイベントの参加者にも本を手に取ってもらえるので、新しい出会いが増えました」と小笠原さんは笑顔を見せる。

ハム工房の思いと今後の展望

一方、「ハム横山」の店主、横山拓哉さん(47)は、菱田さんの活動を手伝っていたボランティア仲間。長男がダウン症ということもあり、働くことに困難を抱える人も安心して働ける場所づくりとして、工房で製造したハムやソーセージを提供する飲食店の出店を決めた。

オープン後は2階も使いながら若者の悩み相談の定期開催やインドネシアの人形劇パフォーマンスなど多彩なイベントを実施している。菱田さんは「スタートしたばかりですが、さまざまな人をつなぐ場所づくりを進めていきたい」と話す。