秘伝ソース復活、商品化 岐阜市の老舗洋食店「三河亭」5代目店主の挑戦
秘伝ソース復活、商品化 岐阜市の老舗洋食店「三河亭」

岐阜市八ツ寺町にある1894年創業の洋食店「三河亭」が、約8年間の休業を経て、5代目店主の手で秘伝のソースを復活させ、再オープンした。カレーライスの上に半熟の目玉焼きを載せ、秘伝のソースをかけた丼「高等ライス」目当てに全国からファンが訪れる。さらに、家庭でも味わえるようソースの市販化にも乗り出している。

秘伝のソースの味と歴史

口に含むと、ショウガや唐辛子のピリッとした辛みや酸味が広がり、その後、甘みがふわっと漂い、舌を心地よいコクが包み込む。特別な材料を使っているわけではないが、クセになるのが三河亭の秘伝のソースだ。現在の5代目店主・服部恵美さん(40)の曽祖父・中島林市さんが開発し、カレーやトンカツ、チキンカツなど幅広い料理と相性抜群だ。

秘伝のソースを愛した常連客らで連日にぎわっていたが、2013年、店を切り盛りしていた服部さんの母・京子さんが他界。従業員不足だったこともあり、休業を余儀なくされた。

再開への道のり

今でこそ店主として看板を背負う服部さんだが、元々はアパレルメーカーのデザイナーとして働いていた。母からは「無理して継がなくていい」と念押しされていたが、「ソースが戻れば、また開店できる」と信じ、20年9月、ソース作りを本格的に始めた。しかし、飲食店で勤務した経験もなかったため、一筋縄では行かなかった。

秘伝のソースの作り方は、母直筆の紙に書かれていた。しかし、「砂糖お玉大盛り3杯」でも、お玉のサイズが分からない。指示通りに作っても、夏はサラサラ、冬はトロトロ……。落胆の連続だった。

かつてソースを作っていた父・稔さん(75)にも協力してもらい、何十回もの試行錯誤の結果、「なめた瞬間『この味だ!!』と衝撃が走る味」(服部さん)にたどり着いた。21年にメーカーを退職し、同年7月に再オープンした。

商品化への挑戦

「店に通えなくなっても三河亭の味を食べたい」という声が常連客らから聞かれるようになり、ソースの商品化を決めた。賞味期限や水素イオン指数(pH)など、普段気にしない「数値」に気を配り、特別にレシピを作成。今年6月に完成、販売を開始した。目標は3年以内に200本を販売することだったが、9月末時点ですでに約80本が売れる人気ぶりだ。

30年以上店に通う常連客、真田千代子さん(79)は「一回店を閉じたと聞いたときはがっかりしたが、もう一回食べられると聞いてうれしかった。家で三河亭のソースが食べられるなんて」と感激していた。

服部さんは「今後も、このソースとともに歴史を刻んでいきたい」と意気込んでいる。1本165グラム入り。店舗内で販売しており、税込み1000円。