代々木アニメーション学院(東京都千代田区)は25日、エンターテインメント業界での活躍を目指す「衣装デザイン科」を2027年4月に新設すると発表した。AKB48や=LOVE(イコールラブ)といった人気アイドルグループの衣装デザインを手掛ける茅野しのぶさんがカリキュラムを監修し、隔週で授業を担当する。茅野さんが常設クラスを受け持つのは初めて。同校は=LOVEなどのマネジメントも手掛けており、新学科設立で相乗効果を見込む。茅野さんは学生の指導にあたり、「未来のスター、私にとって脅威な存在を自分の手で生み出したい」と意気込んだ。
エンタメ業界への人材輩出に特化
記者発表に登壇した伊藤太郎社長は「2つの事業の相乗効果のある融合を考えていた。=LOVEの発足当初からお世話になっている茅野さんから、アパレル業界で(デジタル作画ができる)人材が不足していると聞いた。これはうまくいくかもしれないと思い、協議を重ね衣装デザイン科を立ち上げることになった」と話した。
新学科は、ファッション業界を目指す一般的な服飾専門学校とは異なり、エンターテインメント業界への人材輩出に特化する。衣装の設計思想では、服作りではなく、ステージなどでの「魅せ方」の総合的なプロデュースに主眼を置く。同校の強みである液晶タブレット、3D、配信といったデジタル技術の活用にも力を入れ、即戦力の育成を図る。=LOVEなどのライブで、衣装制作会社に頼らない学生による衣装補修の可能性も示唆した。
衣装が〝バズ〟の火付け役
講義を担当する茅野さんは「(代アニは)コンテンツホルダーであることが大きい。即戦力を作る上では、学校でいくら教えても、実践で学ぶ場があるかどうかが重要だと思う」と指摘。さらに、「私は23歳くらいの時に、AKB48の衣装を現場でやらせていただいた。=LOVEなどのライブの前に、演出を考えて(衣装の)デザイン画を描いており、現場で答え合わせやフィードバックができている」と話した。
魅せ方の総合プロデュースという特色について、茅野さんは「プロデューサーの意向をどうくみ取ってデザインに落とし込んでいくか。秋元康さんや指原莉乃さんと一緒にやっている中で、衣装の力というか、戦略として衣装を捉えている。人の琴線に触れる、戦略になる衣装作りを教えていきたい」と述べた。
記者発表には、茅野さんがデザインした新曲衣装を着用した=LOVEの大谷映美里さんも登場。プロデューサーである指原さんからの「見つけた人がときめくから欲しい」という要望に応え、ドット柄の生地にグループ名が隠された衣装を紹介した。「10文字で説明できる衣装」(茅野さん)としてデザインされている。新衣装は、群馬県桐生市のレース工場で手作業で作られたものを使用。ウエスト部分のスナップボタンによって、スカートが下がらないといった機能性も兼ね備えている。
=LOVEのかわいらしい魔法少女風の衣装は、SNSで話題となり、「とくべチュ、して」を代表曲に押し上げた。ミュージックビデオとは異なる別の衣装がヒットにつながる〝バズ〟の火付け役となったという。
「AIに指示する教育が重要」
アパレルブランドのプロデュースにも携わる大谷さんは、「かわいいと動きやすさの両立は大変だと思うんですけど、(茅野さんがクリエイティブディレクターを務める)オサレカンパニーさんの作る衣装は本当に完璧」と称賛。「ライブ中にカメコ(写真愛好家)さんに撮っていただいたお写真を見返すと、すごくシルエットがきれいで、スカートの広がりがかわいい。踊っている最中、こんな素敵な姿なんだと実感する」と話した。
クリエーティブ産業全体ではAI活用が進む。茅野さんが衣装をデザインするAKB48は、人工知能(AI)による楽曲をリリースするといった大きな外部環境の変化が起きている。AI時代の教育に関する産経新聞の質問に対し、茅野さんは「3年前くらいにAIがデザインの職業を奪うのではないかと思って実践してみたことがある。可もなく不可もなくという形で、AIに指示する側の教育が重要。AIといい付き合い方をしていかなければいけない」と語った。AIに過去のデザインを学ばせ、AKB48の在籍メンバーの顔を全て合成し、ドレスと合わせたものを作らせてみたという。
茅野さんは「(AIが)新しいギミックを生み出すのは、まだ結構大変なのかなと思う。見たことないところから持ってこないといけない」と指摘。リボンがモチーフとなっている人気曲「劇薬中毒」の特徴的な衣装は、わらじの編み方からインスピレーションを得たと壇上に飾られた実物を示して解説した。その上で、「授業で学ばせようと思うのは、自分が出したデザインに対して、例えば、=LOVEで10人分の衣装を作るとき、AIに一人ずつのバリエーションを考えていくのをやらせるのはありだ」と話した。一方で「学生がAIにデザイン画を描かせたかどうかは、(私には)絶対に分かる。そこはもう破り捨てたい。それをやっているうちは誰かの模倣でしかない」との考えを示した。
伊藤氏は、アニメーションの世界で声優の声がAIで模倣されるといった問題を引き合いに出し、「そこを教えるのは重要。活用の仕方を間違えると法律違反になることも多々ある」と付け加えた。代々木アニメーション学院は1978年に設立され、現在は全国に9校舎を持つ。人気アニメ「葬送のフリーレン」では、同校の卒業生が声優や原画などを担当した。ライブハウスの運営も行っており、現場のノウハウを教育に還元するスタイルが特徴となっている。



