朝井リョウの小説『イン・ザ・メガチャーチ』が5月度の「オリコン月間BOOKランキング」で1位を獲得し、4月に続き2ヶ月連続の首位となった。本作は2026年の「本屋大賞」を受賞し、大きな話題を呼んでいる。
著者の朝井リョウは『何者』で直木賞を受賞、近年でも『正欲』や『生殖記』など社会を鋭く描く作品で注目されてきたが、本屋大賞は初受賞となる。
『イン・ザ・メガチャーチ』は、アイドルグループ運営に関わる男、心労を癒やしたい大学生、とある報道で状況が一変する女の3人の視点から物語が進行。ファンダム経済を「仕掛ける側」「のめり込む側」「かつてのめり込んでいた側」という多角的な切り口で描き、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出した作品だ。
朝井自身は本屋大賞の受賞スピーチで、本作の共通テーマを「生きる推進力」と語った。単なる社会派小説にとどまらず、登場人物たちの生々しいエネルギーや現代の“オタク”の解像度の高さが多くの読者の心を掴んでいる。
「推し活」の歴史は平安時代から
現代のトレンドのように語られる「推し活」だが、その歴史は驚くほど古い。番組内では、時代ごとの推し活の変遷が語られた。
江戸時代には、水茶屋の看板娘が浮世絵に描かれて人気を集め、浮世絵は現代のブロマイドやアクリルスタンドの役割を果たした。顔写真が刷り込まれた「団扇絵」は、現代のライブうちわのルーツと言える。
明治時代には、浅草の凌雲閣にエレベーターが設置された際、芸者たちの写真を使った「人気投票」が開催された。これは現代の「推しメン投票」そのものである。
さらに、夏目漱石の作品『三四郎』や『行人』には、当時人気だった「娘義太夫」の公演で「どうする! どうする!」とかけ声をかけるファン「堂摺連」の描写が登場。現代の「コール」文化が明治時代から存在したことを示している。
その後、1970年代の「親衛隊」によるコールやライブ参加、1980年代のおニャン子クラブによる「身近な存在」へのシフト、90年代以降のインターネット・掲示板を通じたファン同士の交流を経て、現在の多種多様な推し活文化へと発展した。
さらに遡れば、平安時代の菅原孝標女による『更級日記』も“推し活本”と言える。田舎に住む著者が『源氏物語』を読みたくて等身大の仏像を彫り祈り続けたエピソードは、現代のファンがライブチケット当選を神仏に祈る姿と重なる。
出版界の一ジャンルとして確立
近年のオリコンランキングでも、「推し活」は出版界における確固たるジャンルとして確立している。
『イン・ザ・メガチャーチ』のほか、2021年に芥川賞を受賞し「オリコン年間BOOKランキング」で5位に入った宇佐見りんの『推し、燃ゆ』、2026年オリコン上半期ランキング「新書」で1位の三宅香帆『「好き」を言語化する技術』など、推し活をテーマにした本のヒットが増えている。
番組の終盤で「私たちにとって推し活とは何か?」という問いに、MC陣からは「生きる推進力」「語りたくなるもの」という答えが挙がった。客観的に見れば時に辛そうに見えたり盲目的になったりする瞬間もある推し活だが、確かな充実感と日常を生き抜くための熱量が詰まっており、「推し」は現代人の心を支えるエネルギー源と言える。



