きらびやかで重みのあるピアノの音色は、東京音楽大大学院修士課程1年の押川憧子(とうこ)さん(25)の右手から奏でられる。思うように手を動かせなくなる「局所性ジストニア」を3年前に発症し、両手での演奏が難しくなった宮崎市出身の「右手のピアニスト」は、「同じような状況の人のためにも右手のレパートリーを開拓したい」と音楽活動に励んでいる。
発症から現在まで
押川さんは6歳から本格的にピアノを始め、県内外の講師のレッスンに通った。宮日音楽コンクール中学生ピアノ部門で最優秀賞に輝くなど活躍し、プロのピアニストを目指して東京音楽大に進学した。
体に違和感を覚えたのは大学4年生だった2023年の夏。ピアノを弾いていると痛みがあり、左手をうまく使えなくなった。病院での診断は「局所性ジストニア」で、医師からは「これ以上悪くならないためにはピアノを弾かないことです」と言われた。「やめないといけないんだな」と絶望的な気持ちになった。
片手での音楽への転機
その後、一時はピアノから離れようとも思ったが、迫っていた大学の卒業試験に向けて片手で弾ける曲の練習を始めた。両手を使えるようになりたいとの思いは強く、並行してリハビリのトレーニングにも励んだ。前日できていたことが次の日できなくなることもあるなかで、心の支えになったのは片手での音楽だった。「片手で弾いているときは、どうしたらもっと良い響きや音楽になるだろう」と純粋に楽しめた。
今後の活動への思い
発症後に通った、片手で演奏する人らの音楽イベントはみなが楽しそうに音を奏でていた。うれしそうに音楽を語り合い、車いすで来場した人らも楽しんでいた。「どう社会に貢献していけるのか」と問いかけながら、押川さんは右手での演奏活動を続けている。



