自主制作映画『レンタル家族』が、東京・新宿のK's cinemaで異例の盛況を見せている。2025年12月の1週間限定公開と、7月31日からの本公開を合わせ、8月2日までに上映された計10日間すべてで満席を記録。3日と4日の上映もWeb予約で満席となり、5日分もすでに約8割が埋まっている。同館で自主映画がこれほど長く満席を続けるのは、『カメラを止めるな!』以来の快挙だという。
物語と舞台あいさつ
本作は、認知症の母を支える女性が「レンタル家族」というサービスと出会い、新たな家族の形に触れていく物語。東京で働く洋子は、父・忠勝とともに、認知症が進行する母・千恵子を支えている。千恵子は洋子が離婚したことを忘れ、元夫と娘について繰り返し尋ねるようになっていた。
ある日、「レンタル夫」として派遣された松下豪と意気投合した洋子は、母について相談する。すると松下は、自分が夫、知り合いの子役・安田朱里が娘となり、千恵子の前で家族を演じることを提案。複雑な事情を抱えた人々による“家族”の日々を通じて、幸せの新たな形を描き出す。
8月2日には、大ヒットを記念した舞台あいさつが同館で開催され、本作で映画監督デビューを飾った上坂龍之介監督と、『踊る大捜査線』シリーズなどで知られる本広克行監督が登壇した。
監督たちの言葉
本広監督を「子どもの頃から大好きな監督」と話す上坂監督は、ともに舞台へ立った心境を「僕からしたら本当にスーパーヒーロー。変な感じがします」と興奮を隠せない様子。そもそも映画を撮ろうと思ったきっかけについて上坂監督は「祖父が亡くなった時に、自分でもびっくりするぐらい涙が出てきて……」と振り返り、その経験から、かつて抱いていた映画監督になる夢を思い出したという。
初監督作で演出の軸がぶれないよう、本作の登場人物には身近な人を投影したという。認知症を患う千恵子は実の祖母、その夫・忠勝は亡き祖父、娘の洋子は母の友人をイメージして人物像を作り上げたことを明かした。
本作を鑑賞した本広監督は、話している人物をテンポよく切り返すカットバックが多用される映画やドラマの中で、話を聞く側の「受けの芝居」を丁寧に捉えた演出に注目。「しゃべっている人の話を聞いている顔をずっと撮ることに気づくのに何十年もかかるのに、それを若い時にやっちゃうのは驚いた。(主演の)荻野友里さんの静かなお芝居がすごくすてきだった」と評価した。上坂監督も「現場でも本編でも、受けの演技を抜いていただくことにはすごくこだわった」と明かした。
さらに、本広監督は「観た後にしゃべりたくなるのがいい映画。お客さんとディスカッションしていくことが監督の宝になる」とエール。一方で、「監督業にハマりすぎると、めちゃくちゃ貧乏になるから気をつけて」と現実的なアドバイスも送り、会場の笑いを誘った。
今後の展開
上坂監督は、8月7日放送の日本映画専門チャンネルのドラマ『がんばって、がんばらない』で監督を務めるほか、エイベックス主催の「アクターズスタンド」でも監督に抜てきされている。さらに、今後のオファーに備え、すでに次回作の脚本も準備しているという。
8月6日の上映後には、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が登壇するトークイベントも急きょ決定。自主映画が観客の口コミを追い風に上映の輪を広げていく――。『カメラを止めるな!』『侍タイムスリッパー』が示した“発見型ヒット”の流れに、『レンタル家族』も続くことができるのか。新宿K's cinemaから全国へ、今後どのように広がっていくのか注目される。



