ミセス大森元貴、新作「POPS」は自分たちへの課題 陰も陽も歌い切る覚悟
ミセス大森元貴、新作「POPS」は自分たちへの課題 陰も陽も歌い切る覚悟

Mrs. GREEN APPLE(ミセス)が、3年ぶり6作目となるフルアルバム「POPS」を先月末にリリースした。ボーカル・ギターの大森元貴(30)が全曲の作詞作曲を手がけ、インタビューで新作に込めた思いを語った。

「POPS」というタイトルに込めた戒め

前作「ANTENNA」(令和5年)以来となる本作。大森は「非常に大きいタイトルなので、ギリギリまで迷った」と明かしつつ、「POPSという言葉には大衆的とか商業的であることっていう意味がある。『そこからずれていくんじゃねえぞ』という、自分たちに対する課題としてつけました」と語った。

本来バンドはニッチな存在で、「分かってくれる人だけ聴けばいい」という精神に陥りがちだという。しかし大森は「これだけ好きなことをやらせてもらっているミセスが、突然、そんなことを言い出したら、めっちゃダサいじゃないですか?」と話し、タイトルはそう言わないための戒めであり、国民的バンドという看板を背負う覚悟の表明だと説明した。

陰の要素から目を背けない美学

大森はPOPSについて、「人にとって必要なもので、向かう場所を照らし、パワーを届けてくれるものでなくてはならない」と持論を展開。そのためには明るいことだけを歌うのではなく、ドキュメンタリー性をはらむべきだという。

「僕に孤独感があり、愛に飢えていることは、どうしても剥がせなかった。それが僕が僕である理由だったりもするから。大衆的であるためには、陰の要素から目を背けないことも必要。きれいごとを歌うことがPOPSではない。これが、僕の美学です」と語った。

アルバムは全16曲を収録。今年度前期のNHK連続テレビ小説「風、薫る」の主題歌「風と町」など7曲は既に発表済みで、大森は9曲を新たに書き下ろした。ボツにした曲はなく、ギターなどの楽器を使わずデジタル機材のみで作曲。バックトラックを作りながら主旋律と歌詞が同時に出てきたといい、形式にとらわれないことで異なる拍子が混じった複雑なリズムも自然とできあがったという。

負の感情を描いた新曲群

「共犯」「禁じた遊び」の2曲は、今年6月の「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」授賞式に参列した後、朝までの短時間で書き上げ追加した。式典に参加し刺激を受け、「アルバム収録全14曲とかヌルいこといってちゃあダメだ。あと2曲ぐらい必要だぞ」と闘志が湧いたという。

新曲の多くは妬み、憎しみ、絶望といった負の感情を歌っており、「内省的な言葉が増えた。僕が書く必要がある内容が、より濃くなった気がする。まさか『POPS』なんて名付けないだろうという楽曲だらけ」と話す。

「瞞し」と「エピソード」は初期にほぼ同時に完成させた対照的な双子のような歌で、「瞞し」は「もういいや」と繰り返し人生をあきらめるかのような絶望を表す。「ここまで歌っちゃっていいものなのかっていう挑戦だった曲」と振り返る。「エピソード」は自分の未熟さを恥じ、「シンデレラ」「禁じた遊び」は他人を妬み、「ア・ポステリオリ」は人が生きていく中で「腐っていく」と突き放す。

一方で「風と町」「夏の影」「Brand New」など輝く太陽のような、甘酸っぱい感傷に満ちた歌もある。「こういう矛盾に満ちた歌詞は、人工知能(AI)には書けないはずだ。陰の気持ちがあるから、一方でポジティブなことを歌うことに、より意味が生まれる」と語った。

CDという形にこだわる理由

陰と陽のコントラストを際立たせるため、16曲を収めたアルバムとして発表することに意義があるという。大森は「どうしたら配信で再生されるかなんてことは意識せず、ともかく自分が書きたい歌を書く。それらを皆さんに届ける上でどういうふうにパッケージすべきかだけを考えている」と話す。

CDという物理メディアでアルバムを一塊として聴いてもらうことにもこだわり、「令和8年の9月に、好きなアーティストのCDを買った。そういう体験が記憶に残り続けることに意味があると思っている」と説明。デジタルで手軽に音楽が聴ける時代だからこそ、ひと手間かけて手に入れることに価値があるとし、「まだ、もうちょっとあらがっていいかな」と語った。