不登校の漫画家・棚園正一さん、京都橘大で特別講義 「道は選び直せる」と語る
不登校の漫画家・棚園正一さん、京都橘大で特別講義

小中学校時代に不登校を体験した漫画家の棚園正一さん(44)が、不登校や引きこもりの支援を学ぶ学生らに今月、京都橘大(山科区)で特別公開講義を行った。外部からはうかがい知れない、先の見えない葛藤、揺れ動く内面など当事者ならではの視点から、「正しいか間違いかではなく、苦しんだ先に本人や家族にとって想像できなかった道が開けていく」と語った。

不登校の経験を漫画に

棚園さんは愛知県出身。小学1年に担任から受けた平手打ちをきっかけに学校に通えなくなった。アニメの専門学校やフリースクールなどに通った。大学の入学の資格を得て、名古屋芸術大を卒業し、プロの漫画家になった。自身の体験を描いた「学校へ行けない僕と9人の先生」(双葉社)などの作品が話題となり、講演などの啓発活動に取り組んでいる。

京都橘大学では、作業療法士の養成課程があり、多面的に不登校や引きこもりなどの支援を学生に教えている。真下いずみ准教授が企画し、21日に開かれた特別公開講義では、学生や一般の聴講生ら約80人が耳を傾けた。

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当事者の視点から語る葛藤

棚園さんは繰り返し見た悪夢や、どうしても朝に布団から出られない苦しみなどを描いた作中の場面を示し、「どうして自分はこうなったという悲しさで自分を恨み、ずっと自分を責めていた」と振り返った。

家では、「負けてはいけない」「どうすれば周りと同じになれるのか」という気持ちが膨らみ、せかされるように、好きな絵を描いたり、勉強したりしていたという。学校に行けない時間が長くなるほど、その理由も幾重にも増え、「何も動いていないように見えて、本人の中ではめまぐるしく考えが巡っていた」と話した。

鳥山明さんとの出会いが転機に

転機は、大ファンだった漫画家の鳥山明さんと家が近く、中学1年で知り合ったことだった。鳥山さんから、描きためた絵を「すごいじゃん」「もうすでに自分の世界があるのがいいよね」とほめられ、悩み続けた学校の話に触れられることもなかった。家や学校とは別の居場所を得て、ささやかな雑談を交わせることで「本当に生きているという感じがした」という。

交流は、鳥山さんが一昨年に亡くなるまで続いた。フリースクールでは世代や事情の異なる友人ができ、街を歩いたり、キャンプに行ったりするだけで、自分に誇らしさを感じられたという。「将来、何かにつながると考えたことも、その時に達成できたこともなかった」が、「笑って安心して過ごせる経験が、少しずつ気持ちの土台になった」と述べた。

「何度でも選び直せる」

現在は漫画家として生計を立て、結婚して家族を持ったが、「今の自分の姿が人生のゴールだったのではなく、当時は大人になる姿が全く想像できなかった」と強調した。「一本道ではなく、進んだり戻ったりして選び直してきた。学校に行けなかった時間が正解でもない。今、想像できなくても人生が止まっているわけではない。答えが見つからなくても、何度でも選び直せると感じる」と結んだ。

棚園さんは、不登校だった頃の体験や、自分に向けて書いた手紙などを、ブログ「学校に行かなくなってからの僕の話」(https://ameblo.jp/shelf-studio/)などでも公開している。

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