2027年1月30日、31日に英国ロンドンのサドラーズウェルズ劇場で『ロンドン歌舞伎舞踊公演』が開催される。英国での松竹製作の歌舞伎公演は、2010年の『松竹大歌舞伎 ロンドン公演』以来、約17年ぶりとなる。24日には日本外国特派員協会で、出演する市川染五郎(21)と尾上辰之助(20)が記者会見を行った。
初の海外公演への思い
コンテンポラリー・ダンスの聖地として世界的に知られるサドラーズウェルズ劇場は、英国で初めて歌舞伎公演が行われたゆかりの深い劇場で、今回が通算8度目の上演となる。近年、歌舞伎への世界的な関心が高まる中、歌舞伎の美意識が凝縮された舞踊の魅力をロンドンへ届ける。
冒頭のあいさつで染五郎は「この度、サドラーズウェルズ劇場で歌舞伎公演を行わせていただくことになりました。また同世代の辰之助くんと共に歌舞伎の力を海外の方に発信できる機会をいただけたことを本当にうれしく思っております。今回、私自身といたしましても初めての海外公演でございます。とてもありがたく、また海外公演というのはどこか憧れでもありましたので、とてもうれしく思っています」と語った。
海外公演の意義については「日本独自の文化、また美意識、様式美というものが詰まったのが、歌舞伎でございます。400年以上前に生まれまして、そこからいろいろな時代を生き抜いて、その時代、その時代の人々の移りゆく文化、感覚価値観、そういうものを吸収しながら、現在に至るのが歌舞伎だと思っております」と説明。「日本の演劇ということにおいてだけではなく、日本人そのものの今まで何百年積み重ねてきたものを象徴するのが歌舞伎だと思いますし、その時代、その時代を映してきた鏡のようなものだと思っております。その日本の独自の美しさ、それを海外の方に知っていただくというのはとても重要なことだと思います。また、まずは日本の方に歌舞伎を知っていただきたいという思いがございますので、今回こうやって国外に発信させていただく機会をいただけたということで、国外に発信して終わりではなく、また外に何か少しでも結果を残すことができたらうれしいなと思っております」と力を込めた。
歌舞伎ブームをつなぐ
辰之助は「今、映画『国宝』の効果や数々の新作歌舞伎、またその新作歌舞伎などのネット配信により、国内外に歌舞伎というものがとても知られている、いわゆるブームになっている。そんな中で、まだ実際に歌舞伎を見たことがない国内外のお客様ももちろん大勢いらっしゃると思いますので、まずは実際に見ていただきたい。やはり歌舞伎という芸術は実際に生で感じていただける雰囲気であったり、そういった空気感っていうものが魅力となっておりますので、そこを感じていただきたい。それを実現していただけるこの海外公演というのはとてもありがたい機会ですし、この機会でいろんな方々にこの歌舞伎を生で感じていただきたいです」と笑顔で語った。
さらに「この流れをブームだけで終わらせることなく、我々がつないでいき、また次世代に歌舞伎をつないでいく。代々つながれていくものだと思いますので、そういった芸術というものをぜひ今回このサドラーズウェルズ劇場にお越しの皆様に知っていただきたいです」と呼びかけた。
海外での活動への考え
海外の記者から「国際的に成功したいという野望はありますか?」という質問が寄せられた。染五郎は「決して悪い意味ではなく、そこをゴールですとか、目標に据えているかと言われますと必ずしもそうではない」としながらも「やはりまず役者を知っていただいて、そこから歌舞伎に入っていただくというのも大事だなというふうに思っています。歌舞伎以外も、いろいろ挑戦させていただいている。それも、まず自分を知っていただいて歌舞伎に足を運んでいただく、その入り口になればなという思いからさまざまな挑戦をさせていただいております。何がきっかけになるかやっぱりわかりませんので、そういう意味で国内外に限らず役者として求めていただけるのであれば、いろいろな場で挑戦したいなと思っております」と答えた。
辰之助は「役者も大勢いて、本当に人それぞれですから目指すゴールはそれぞれ違うと思います。例えば、海外にコンスタントに伺って、歌舞伎を広める活動をしていらっしゃる役者さんもいらっしゃいます。ですので、海外で成功することがゴールであるということは一概には言えないんですけれども、彼が言った通り求められれば、どこにでも行きお芝居をする。まずは求められる役者になること」と同調。「役者は一生修行の身だと思っていますので、ある意味そういったゴールというものを定めずに修行をしていきたいと思います」と力強く語った。
公演演目
公演では、以下の3つの演目が披露される予定だ。
『藤娘』は、松の大木に藤の花が絡み咲き乱れるころ、塗笠をかぶり藤の枝を携え現れた美しくも愛らしい娘が、藤の精として浮気な男心のつれなさを近江八景にちなんだ“くどき”で艶やかに踊る。「藤の木に酒を注ぐと美しい花が咲く」という言い伝えにちなみ、かわいらしさと女性の色気が織り混ざった華麗な舞で恋の切なさを語る。やがて日も暮れゆき、名残を惜しみながら姿を消す。愛しい男性への恋心を華やかな衣裳と艶やかな踊りで表現する日本舞踊の代表的な演目だ。
『雪の石橋』は、唐の国の清涼山に棲む獅子の精が、雪が降りしきるなか勇壮な獅子の狂いを見せ舞い遊ぶ。能の「石橋」をもとにした舞で、後半の毛振りは圧巻。百獣の王である獅子と牡丹の組み合わせは、平安や繁栄を祝う意味合いがあり、おめでたい演目として人気を集めている。
『男女道明寺』は、道成寺の鐘供養のために奉納の舞を舞う白拍子花子と桜子。しかし、桜子が実は左近という男の狂言師であることがあらわになり、女であると騙した償いに強力たちはもうひとさし舞うよう所望する。花子と、男の姿に戻った左近は、満開の桜のなか華やかな踊りを披露する。『京鹿子娘道成寺』をもとにした「道成寺物」の代表作で、女方と立役の二人で踊る趣向が特色だ。



