福岡市中央区の独立系書店「ブックスキューブリックけやき通り店」が20日に閉店し、四半世紀の歴史に幕を下ろす。店主の大井実さん(65)は、毎年秋にけやき通りなどで開かれる本のイベント「ブックオカ」を手がけるなど、本を通じて人と人をつなぎ、地域を盛り上げてきた。今後は同市東区の箱崎店を拠点に新たなまちづくりに挑戦する。
「福岡を本の街に」という思い
大井さんはイベント会社勤務などを経て、2001年にけやき通り店を構えた。13坪の店内は木製の床や白熱灯の照明が落ち着いた雰囲気で、大井さんが選んだ雑誌やビジネス書、文芸書など様々なジャンルの約1万冊が並ぶ。店名は開業年にちなみ、映画「2001年宇宙の旅」の監督名にあやかった。
昨年、両親を相次いで亡くし、自身も今年で65歳になることなどから「人生を見直す時期」と閉店を考えるようになった。08年に開いた箱崎店との2店舗経営も大変で、1か所に集約することにしたという。
開店当時は、「天神書店戦争」と呼ばれるほど同市・天神に大型書店が乱立。「すぐにつぶれるよ」と言われたこともあったが、売り上げや在庫のデータを細かく分析しながら選書にこだわり、魅力的な店づくりに取り組んだ。
ブックオカで地域を活性化
大井さんは、書店経営だけでなく本を通して地域を盛り上げようと、「福岡を本の街に」を合言葉に「ブックオカ」を発案。実行委員長として、06年から毎年10、11月、けやき通りでの古本市をはじめ、市内の書店員が「激オシ」の文庫本を募って推薦帯を制作する企画などを催してきた。ブックオカは昨年、地域の文化向上や活性化に貢献した団体を顕彰する「サントリー地域文化賞」を受賞した。
ブックオカの事務局を長年担当する同市の出版社「忘羊社」代表の藤村興晴さん(51)は、「本が売れない時代でもキューブリックがあることで人が出入りし、本好きの人同士のつながりをつくっていった」と語る。ブックオカは今後、会場を変えて続く予定だ。
箱崎店を拠点に新たなまちづくり
開店25周年を迎えた今年4月にSNSなどで閉店を発表すると、「ステキな本との出会いをつくっていただいた」「けやき通りの象徴でした」などと惜しむ声が多数寄せられた。
JR箱崎駅近くにある箱崎店はカフェを併設し、作家のトークイベントや展覧会などの催しを頻繁に開いている。周辺の九州大箱崎キャンパス跡地では、大規模再開発による新たなまちづくりも計画されている。
「本には人と人をつなぐ力があることを実感した四半世紀だった。多くの人の支えで続けてこられて感謝している。箱崎では新旧の住民をつなぐ役割を担っていきたい」と大井さん。新たな世界の扉を開く旅がまた始まる。



