東京・日本橋と八重洲で開催中の体験型イベント「伝説のポケモンと出会う レジェンドリサーチ in 日本橋&八重洲」で、開幕後の9月、エリア内の主要商業施設における土日祝の平均客数が前年同時期の約150%となったことが、運営する三井不動産への取材で明らかになった。
主要施設の休日客数が前年比約150%に
ポケモン30周年を記念した同イベントは、9月9日に開幕。運営側によると、イベント開始後の9月における土日祝の平均来館者数は、コレド室町・東京ミッドタウン八重洲のいずれも、前年同時期の約150%を記録した。初日には開始前から、謎解きキットの引換を待つ100人超の列ができた。
ただし、イベント参加者の実数は非公表。約150%という数字は、謎解きの参加者数ではなく、各施設の土日祝の平均来館者数を前年同時期と比較したものとなる。来館者数や売上は前年を上回る推移だという。
当日参加型の行動が判明、街全体への回遊も
開催後に見えてきたのが、街歩きイベント特有の参加行動だ。当初は事前に引換券を購入する人が多いと想定していたが、実際には前日までの予約数より、当日に購入して参加する人の方が多かった。台風の影響もあり、券売全体では当初計画に届いていない部分がある一方、1日単位の目標数を達成する日は多い。担当者は「当日購入して参加される方が多数いらっしゃることは新たな勉強であり、現状では非常に好調に推移している」と明かした。
日本橋には以前から「ポケモンセンタートウキョーDX」などがあり、ポケモンのファンとの接点はあった。今回はそこから日本橋・八重洲の街全体へと舞台を広げ、普段はオフィス街としての顔が強いエリアに、親子連れやカップル、友人同士による新たな回遊を生み出している。担当者は「土日祝日は、ファミリーのお客さまが謎解きキットを手に街をめぐっている様子が、目で見ても明らかに増えました」といい、特に子どもの姿が目立つようになったと話した。平日にも、オフィスワーカー以外の来街者が増加し、「カップルや友人同士で、謎解きキットを片手に歩いている姿を多く見かけるようになった」とする。
伝説のポケモンに焦点、街の協力で実現
企画の出発点となったのは、ポケモン30周年という節目だった。運営側から周年企画での協業を持ちかけたものの、当初はすでに各所で30周年に関連する企画が進んでいたことなどから、実現は簡単ではないとみられていた。協議を重ねる中で浮上したのが、今までの「ポケットモンスター」シリーズを象徴する「伝説のポケモン」に焦点を当てる構想だった。担当者は、ポケモン側から「伝説のポケモンに焦点を当てた企画はこれまで行っていない」と聞いたと説明。日本橋が持つ歴史や厳かな雰囲気と、その世界観が合致したことで企画が動き出した。
会場には、伝説のポケモンをはじめとする19体の立像を設置。建物内外の装飾も含めると、総勢100匹以上のポケモンが日本橋・八重洲の各所に出現している。有料コンテンツの謎解き「ポケモンレジェンドリサーチ〜伝説のリサーチレポートを呼び覚ませ!〜」を手がけたのは、松丸亮吾氏が代表を務める謎解きクリエイター集団「RIDDLER」。当初から謎解きありきだったわけではなく、イベントの方向性について試行錯誤を重ねた末、ポケモン好きとして知られる松丸氏への依頼に行き着いた。
参加者は街に点在する立像や展示を手がかりに、伝説のポケモンにまつわる謎を解いていく。初心者や子ども向けのヒントも用意されている一方、家族で参加すると一日がかりになることもあるほどの内容で、街で過ごす時間そのものを長くする仕掛けにもなっている。
地域の協力と今後の展望
街全体を舞台とするにあたり、欠かせなかったのが地域側の協力だった。建物のガラス面や壁面を使った大規模な装飾には、街の関係者への説明や承認が必要になる。担当者によると、企画を説明した際には、街の関係者から「ポケモンはもう日本を代表するIP」との声も上がった。世代を問わず知られる存在だったことが、歴史や伝統を大切にする日本橋で、新たな文化を取り入れた大規模イベントを展開する後押しになった。
謎解きのルート自体が個々の店舗への立ち寄りを求めるものではないが、キットには日本橋の歴史ある店などを紹介する街歩きマップを同封。参加者がキットを提示すると、一部店舗で特典を受けられる仕組みも設けた。長時間の謎解きの合間に飲食や買い物を楽しんでもらい、イベントを目的に訪れた人と街の店との接点をつくる狙いがある。単一施設への集客ではなく、街での滞在や回遊につなげる設計となっている。
舞台を日本橋から八重洲まで広げた背景には、再開発が進む両エリアを一体でめぐってもらいたいという狙いもある。日本橋は江戸時代から交通の起点として発展してきた歴史を持ち、八重洲は東京駅に面する全国からの玄関口となる。ともに歴史を受け継ぎながら新たな都市機能の整備が進む中、街を歩くことで、その変化や新たな魅力に触れてもらいたいという。東京駅が近いことから、首都圏だけでなく中京圏や関西圏からの来訪も想定。協賛するJR東海も、広域からの誘客という狙いに賛同した。世界的にファンを持つポケモンを通じ、国内だけでなく海外から訪れる人にも街を知ってもらうことを目指している。
現時点で、同規模の次回企画が具体化しているわけではない。一方で、条件が合えば、今後もさまざまな作品やアーティストとの取り組みを検討していくとも話した。担当者は、今回訪れた子どもたちに向けて「いつか日本橋や八重洲で働くようになったときに、『そういえばポケモンのイベントをやっていたな』と思い出してもらえるような、人の記憶に残るイベントになれば」と期待を込めた。イベントは11月29日まで開催。街に設置された立像や装飾は無料で観覧でき、謎解きへの参加には3300円のキット引換券が必要となる。