第79回広告電通賞で大塚製薬が通算3回目の総合賞、AI時代の「人間回帰」が特徴に
広告電通賞で大塚製薬が総合賞、AI時代の「人間回帰」が特徴

9月15日、「第79回広告電通賞」の贈賞式が開催され、大塚製薬が通算3回目となる総合賞に輝いた。同社は「プリント広告」「フィルム広告」の2部門で最高賞を獲得したほか、2つの金賞、7つの銀賞を受賞している。

広告電通賞とは

広告電通賞は1947年に創設された総合広告賞で、「広告電通賞審議会」によって運営されている。優れた広告コミュニケーションを実施した広告主を顕彰することを通じて、日本の産業・経済・文化の発展に貢献することを目的としている。

第79回には全国から昨年を上回る1,345作品の応募があり、約3カ月にわたる審査・選考を経て、7月31日に行われた最終選考委員総会で各賞が決定した。

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AI時代だからこそ「人間回帰」

開会にあたり、広告電通賞審議会の三村明夫会長が登壇した。三村氏は、生成AIをはじめとするデジタル技術が急速に発展し、企業活動だけでなく人々の日常生活にも浸透している現状に触れた。その一方で、テクノロジーの進化によって情報を容易に得られるようになったからこそ、「効率性や利便性」だけでなく、「共感や信頼・体験といった人と人とのつながり」や、「実際に顔を合わせ、感情を共有することの価値」が改めて見直されていると語った。

そういった背景の中、今年の応募・受賞作品については、その特徴を象徴するキーワードとして「人間回帰」を挙げた。今回の選考を通じて「人々が実際に集まり、会話し共に楽しむ雰囲気や、リアルな体験を通じて新しいコミュニケーションを創出した作品が多く見られた」と紹介。デジタル技術を効果的に活用しながらも、その先に人と人とのコミュニケーションがある点に触れた。

さらに、消費者の行動データや購買データなどを活用し、その成果を店舗での体験や対面でのコミュニケーションにつなげる「デジタルとリアルの融合」も今回の特徴として挙げた。最後に三村氏は、「どれほどテクノロジーが進歩しても、その中心にいるのは人間」と語り、今回の作品に見られた「人間回帰」や「デジタルとリアルの融合」は、単なる広告表現のトレンドではなく、現代社会が求める新たな価値観を示しているとの考えを述べた。

広告制作で大切なのは「広告主の情熱」

続いて、広告電通賞審議会の大平明理事長が選考経過と審査報告を行った。大平氏は広告市場の動向について、2025年の日本の総広告費が4年連続で過去最高を更新し、中でもインターネット広告費が総広告費の5割を超えたことに言及。一方で、大阪・関西万博の開催などによる人流の増加に伴い、リアルな接触場面での広告活動も活発化していると説明した。

受賞作品については、人と人との心の交流を描くヒューマンタッチの表現から、テクノロジーを活用して人の心を揺さぶる体験を実現したものまで、幅広い作品が集まったと振り返った。さらに、若い世代への商品・サービス訴求に工夫を凝らした作品や、社会課題とその解決を目指すソーシャルな視点を持った企画・アイデアも見られたと紹介。「これらのアイデアは多くの方々と共有すべきもの」との考えを示した。

総合賞を受賞した大塚製薬については、プリント広告とフィルム広告の2部門で最高賞を受賞したことに触れ、同社が若い世代への訴求に長年にわたり熱心に取り組んできたと紹介。広告主の情熱が広告制作においていかに大切かを改めて感じさせる作品だったと評価した。

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大塚製薬が3度目の総合賞、「人を見つめ、人を理解する挑戦を続ける」

総合賞の受賞時には、大塚製薬 代表取締役社長の井上眞氏が登壇した。井上氏は受賞への感謝を述べた上で、大塚製薬が大切にしている考え方について「病気や症状だけを見るのではなく、その先にいる人と向き合うこと」と説明。自分とは異なる立場から物事を見つめ、その人の思いや体験を理解しようとすることは、広告やコミュニケーションの本質にもつながるとの考えを示した。

今回評価された作品についても、それぞれ異なる視点から人を見つめた挑戦だったと振り返った。フィルム広告部門で最高賞を受賞したカロリーメイト「いちばんの味方」ではAIの視点から人間を捉え、ポカリスエット「つば裏言葉」では高校球児の視点に立って、その努力や思いに光を当てたと紹介した。

情報があふれAIが進化する時代だからこそ、人の思いや体験に目を向け合うことがますます大切になるとし、「人を見つめることは、社会を見つめることでもあります。私たちもまた、人を見つめ、人を理解する挑戦を続けてまいります」と締めくくった。

電通・松本社長「広告には時代の空気が色濃く映し出される」

閉会にあたり、電通 代表取締役社長の松本千里氏が登壇。総合賞を受賞した大塚製薬をはじめ、各賞の受賞者に祝意を表すとともに、広告主、媒体社、プラットフォーマー、クリエイター、制作会社、選考委員など、広告電通賞に携わった関係者への感謝を述べた。

松本氏は「今年度の受賞作品について、改めて感じるのは、広告にはその時代の空気や社会の変化が色濃く映し出されるということです」と語り、生活者を取り巻く情報環境がますます複雑になり、伝えたいことを発信するだけでは届かない時代になったと説明。その一方で、一人ひとりの感情や日常に目を向け、企業やブランドと社会との間に新たな接点を作ろうとする試みが多く表れていたと振り返った。

また、生成AIが広告制作の現場にも浸透し、企画や文章、映像などを支える時代になったことにも言及。AIがクリエイティブを支えるパートナーとなる可能性に触れながら、その可能性に方向を与えるのは「人の想像力であり、価値観であり、志」であると語った。最後に、「人の心を動かしたい」「社会を少しでも良い方向へ動かしたい」という志は時代が変化しても変わらないとし、広告コミュニケーションに携わる人々の新たな挑戦を後押ししていく姿勢を示した。

主要カテゴリーの受賞(総合賞・最高賞・特別賞・SDGs特別賞)は以下の通り。なお受賞一覧は「広告主名・商品・サービス名/作品名」の順で表記(総合賞のみ広告主名)する。

  • 総合賞:大塚製薬
  • イノベーティブ・アプローチ部門 最高賞:エクシング「サウンドロゴカラオケAWARD/サウンドロゴカラオケAWARD ~耳に残る広告から、心が動くニューコミュニケーションへ~」
  • ブランドエクスペリエンス部門 最高賞:デニーズジャパン「パフェ/まっぷたつ?パフェ」
  • エリアアクティビティ部門 最高賞:サントリーホールディングス「ROKU〈六〉/旬窓紀行プロジェクト」
  • OOH部門 最高賞:ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5/PlayStation 5『魔人力士、降臨。』at 両国駅」
  • プリント部門 最高賞:大塚製薬「ポカリスエット/つば裏言葉」
  • オーディオ部門 最高賞:味の素「企業広告/『私と子どもの最後の晩餐』篇」
  • フィルム部門 最高賞:大塚製薬「カロリーメイト/『いちばんの味方』篇」
  • 特別賞:大日本除虫菊「ゴキブリムエンダー、ダニムエンダー、ムカデムエンダー/思春期スケッチシリーズ」
  • SDGs特別賞:ポプラ社ほか自動車関連各社「#たすけてブーブー/#たすけてブーブー」