ちょっと兄ちゃん、財布拾った親切なおっちゃんの話
ちょっと兄ちゃん、財布拾った親切なおっちゃん

数年前、大阪市天王寺区の道を歩いていた筆者のもとに、向こうからかなりこわもての男性がやってくるのが見えた。因縁でもつけられそうな雰囲気に警戒しながらすれ違うと、背後から低いだみ声が聞こえた。「ちょっと兄ちゃん、待ったれや」

緊張の瞬間

ドキリとして振り返ると、学生が体を硬くしてつっ立っていた。多分、振り向くかこのまま逃げるかを思案していたのだろう。その緊張した背に、今度は意外と優しい声がした。「兄ちゃん、これ落としたやろ、このサイフ」

学生の肩の力が少し抜けた気がした。それでもまだ心配なのか、振り向こうとはしない。「あれ、いらんの? ほな、おっちゃんもろとこか」。愉快そうなその口調に、学生は慌てて振り返った。「ああ、いります! ありがとうございます!」

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親切なおっちゃんのユーモア

サイフを受け取って何度もおじぎをする学生に、その人は、「気いつけや。今日は、わしみたいな親切なおっちゃんがひろたからよかったけどな」と笑って去っていった。学生はというと、両膝に手を置いて大きく息を吐いた。あー怖かった、という心の声が聞こえてくるようだった。

それにしても、「親切なおっちゃん」。人に親切にするとき、まずはビビらせて面白がってから、というのはやめにしましょうよ。学生さん、本当に怖がってましたよ。

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