愛知・名古屋アジア競技大会2026(アジア大会)で正式に新種目として採用されたテックボールは、19日に混合ダブルスの準決勝が行われ、日本の早稲昭範・坂本唯那組がイラクのペアをフルセットの末に2―1で破って決勝へ進出。日本勢で初の表彰台となる銀メダル以上を確定させた。
約10年前に競技を始め、日本の第一人者としてプレーしてきた早稲は、日本テックボール協会の会長としての顔も持つ異色の「二刀流」。開催直前になって追加実施が決まった今大会に向け、代表選手としての調整をしながら、競技団体トップとして開催準備にも奔走してきた。
超満員で決勝進出、メダル確定
テックボール会場の名古屋市東スポーツセンターには、何重もの立ち見客が出るほどの観客が詰めかけた。第1セットは相手にポイントを先行されて落とした早稲・坂本組だが、大声援を背に第2セットを奪取。最終セットでも巧みなフェイクやタイミングをずらすショットを駆使して相手のミスを誘発し、12―9で決勝への切符をつかんだ。
初採用のアジア大会が自国開催というタイミングでもあり、日本ペアはメダル獲得を目標としていた。それだけに勝利を決めた直後は内に秘めた感情が爆発。観客と喜びを分かち合った早稲は、「超満員で日本コールで応援してくれて、世界大会でここまでホームを感じられることはなかった」と感極まった表情で語った。
身分証は「選手」「会長」の2枚持ち
元々、華麗なテクニックでリフティングなどを披露する「フリースタイル・フットボーラー」として活動していた早稲が、知人の紹介でテックボールに出会ったのは2017年。すぐその面白さにのめり込み、本格的に競技を始めた。
転機となったのは2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大だ。協会運営の担い手も確保が難しくなった状況で、「ここで日本におけるテックボールを衰退させてはいけない」と自ら会長に就くことを決断した。
会場探しから台の搬入・組み立てまで
今大会の早稲には、大会関係者としての身分証が「選手」と「競技団体の会長」という2種類の立場で発行されており、「アジア大会というか、五輪関係の大会でも初めてのことだとよく言われます」と笑う。ただ、ここまでの道のりは多忙を極めるものだった。
アジア大会での競技実施が正式に決まったのは、開催直前の今年2月。そこからは代表選手としての練習に加えて、アジア大会の会場探しに始まり、運営を依頼するイベント会社など様々な関係者との調整、本番直前のテックボール台の搬入・組み立てに至るまで、競技運営の業務に忙殺された。準決勝の前日も、体のケアをしながら協会としてのメールを返信するなどのタスクに追われていたといい、「自分自身が本当にプレーに専念できることは正直なかった」と明かす。
そんな状況でも心が折れずに動き続けられる原動力は何なのか。早稲は「やっぱり、初めてテックボールをやった時に格好よかったし、楽しかったんですよ。色々言っても根本にあるのは自分がやってて楽しいという感情の部分なので、それを多くの人に味わってほしい」と言う。
2032年のブリスベン五輪での採用を目標とするテックボールは、2010年代前半にハンガリーで誕生した当初から五輪競技への採用をターゲットに掲げ、国際団体が計画的に普及活動を進めている。今回のアジア大会への採用もこの活動の一環だという。そうした戦略に早稲の持つ情熱が融合すれば、メジャースポーツとして認知される日も近いかもしれない。



