原田監督の助言でロケ誘致体制が確立、彦根市が映画のまちに
原田監督の助言でロケ誘致体制が確立、彦根市が映画のまちに

「原田眞人監督(昨年12月死去)のアドバイスがなければ、ロケ地の誘致体制はここまでできていなかったでしょうね」。彦根市エンタテインメント課の山田竜平さん(41)は、原田監督への感謝を語る。

彦根市内では、1952年公開の映画「西鶴一代女」のロケ地となって以降、彦根城や琵琶湖などで映画やドラマの撮影が行われてきた。万城目学さん原作の映画「偉大なる、しゅららぼん」が彦根を中心に近江八幡や長浜など県内8市町で撮影されたのを機に、彦根市は2013年度、フィルムコミッション室を設置。さらに発展させる形で、23年度にはエンタテインメント課を新設し、本格的に「映画のまち」を目指すようになった。

原田監督の助言が転機に

その道筋を確定的にしたのが、彦根でロケを行った原田監督の遺作「BAD LANDS バッド・ランズ」の公開に合わせ、市などが23年9月に開催したトークショーだった。登壇した原田監督は「映画のまちとして(ロケ地の)宝の山を発掘してほしい」と期待を込めた上で、彦根城や街の風景など、ロケ地に選ばれやすい彦根の優位性を強調。市長や同課の担当者に向けて、「彦根を選んでもらうためのロケ地データベースを作るべきだ」とアドバイスを送った。

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市はすぐに動いた。24年5月、市公式サイトから市内で撮影された映画のロケ地が一目で分かるサービスを開始。地図上にある作品名のアイコンをクリックすれば、作品公式サイトのURLや出演者、撮影エピソードなどを見られるようにした。また、下見や事前調査で市内を訪れた業界関係者ら向けに、撮影ポイントを写真などでまとめたファイルを作成。インターネット上には出せない、交渉しやすいタイミングや協力者の個人情報なども記載し、市の魅力を1冊に凝縮した。

約3年間で14作品の撮影実現

こうした活動が功を奏し、市内では約3年間に14作品の映画撮影が行われ、地方都市では有数のロケ地となった。市民を対象にしたエキストラ制度もつくり、現在692人が登録。市民も盛り上がりを後押しする。映画だけでなく、テレビドラマや旅番組などで撮影の問い合わせも相次ぐようになった。

エンタテインメント課には、今も語り継がれている逸話がある。原田監督が初めて彦根で撮影した「日本のいちばん長い日」(15年公開)での一場面だ。彦根城の庭園を本木雅弘さんが歩くシーンを撮影中、片隅で生い茂った草が気になった原田監督が「この草はない方がいいな」と提案。スタッフが慌てて市の文化財担当者と協議し、急きょ草刈りが行われたという。

JFCアウォード優秀賞を受賞

「いい作品をつくってもらうためには、受け入れ側も同じ熱量で取り組まなければならない」。同課ではそんな言葉が引き継がれている。昨秋から製作陣との交渉を担当する松永匠さん(37)は「時には無理難題もあるが、要望の一つ一つを受け止め、できる限りの努力を続けたい」と話す。

今年6月、取り組みは結実する。全国各地で優れたロケーション資源の開発や、市民との協働による撮影支援を行う団体や自治体などを表彰する「JFCアウォード」優秀賞に、彦根市が滋賀ロケーションオフィス、甲賀ロケーション推進協議会と共同で受賞した。山田さんは原田監督の助言から始まったまちづくりが、一つの結果となったことに安堵しながらも、こう続けた。「まだ道半ば。ロケ地を開拓、充実させ、宝の山を磨いていきたい」

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