戦時中の沖縄・八重山諸島で、マラリアの流行地域に強制疎開させられた住民らが犠牲になった史実をテーマにした劇「戦争マラリアの悲劇~波照間島・島民は語る~」が16日、兵庫県宝塚市栄町のソリオホールで上演される。市民劇団「BIGMOUSE(ビッグマウス)」の創立30周年記念公演で、戦後81年の今、平和の大切さをアピールする。(高部真一)
劇団は1996年、部員減少で演劇活動ができなくなった市内の各中学校の生徒らが、市文化財団の呼びかけで集まり発足。その後、社会人も参加する市民劇団に形を変え、広島の原爆被害やひめゆり学徒隊を描いたオリジナル劇を上演してきた。現在、若手はいなくなり、50~80歳代のメンバー13人で活動している。
創立30周年の節目に選んだ「戦争マラリア」
創立30周年の節目に選んだ題目は「戦争マラリア」。戦争末期、旧日本軍は地上戦に備え、八重山諸島の住民に、マラリアを媒介する蚊が多いジャングルへの疎開を強制した。住民約3万1700人のうち、約1万6800人が罹患し、薬品不足などで3647人が死亡したとされる。同諸島では沖縄本島のような地上戦はなかったが、犠牲者の多さから「もうひとつの沖縄戦」とも呼ばれる。
劇団設立時から指導を続ける市在住の演出家・高波匠志さん(79)がテレビの報道番組でこの史実を知り、実話に基づく絵本「忘れな石」を原作にして、脚本を仕上げた。波照間島から、マラリアが流行する西表島に追いやられ、国民学校の児童66人を含む多くの島民が犠牲になった状況を描く。疎開を嫌がる島民を日本刀を持った軍人が脅すシーンもある。
絵本のタイトルに込められた思い
絵本のタイトルは、子どもたちを失った国民学校の校長が、長く語り継がれるようにと西表島の海岸の岩に刻んだ「忘勿石」の文字に由来する。高波さんは「今、戦争マラリアについて『忘れない』と言うより『知らない』という現実がある。劇を通じて一端に触れ、平和を考えてもらえれば」と演技指導に熱が入る。
宝塚市のパート社員、新田朗さん(64)は国民学校の校長を演じる。「子どもたちや島民を助けるため軍人とも対峙した校長の強い思いを伝えられるよう演じたい」と稽古に励む。
公演は午前11時と午後3時の2回。前売り券2000円(当日は2400円)。問い合わせは市文化財団(0797・85・8844)へ。



