「飛鳥・藤原の宮都」の県内4件目となる世界遺産登録が正式に決まった26日。橿原市、桜井市、明日香村のパブリックビューイング(PV)会場などでは地元住民らが待ちわびた吉報に歓喜し、3市村の構成資産のさらなる魅力発信や次代への継承を誓った。
専門家や首長らが喜びと課題を語る
PVメイン会場の県橿原文化会館(橿原市)には、午前9時半頃から世界遺産「飛鳥・藤原」登録推進協議会の専門委員会委員長である木下正史・東京学芸大名誉教授、亀田忠彦・橿原市長や松井正剛・桜井市長、森川裕一・明日香村長ら約350人が集結。韓国・釜山で開かれた世界遺産委員会の審議の様子を映し出すスクリーンを静かに見守った。午前10時45分頃、登録が決定すると、そろいのうちわやタオルを掲げて歓喜にわき、会場は祝福ムード一色となった。
元明日香村教育委員会文化財課長の相原嘉之・奈良大教授は「取り組みがようやく報われ、感無量だ。世界に価値を認められてうれしいが、その価値をどう表現するかが今後の課題。VR(仮想現実)を含めて様々な手法で地下に広がる遺跡への理解の質を高めたい」と話した。藤原宮跡など構成資産の調査・研究にあたってきた奈良文化財研究所の本中真所長は「登録を契機に国、県、地元市村との協働・協力を一層進め、多様な文化財・文化遺産に末永く親しみ、その魅力を実感していただけるよう努めたい」。発掘調査や講座などで明日香村と連携してきた関西大の高橋智幸学長は「登録に少しでも貢献できたことが本当にうれしく、誇りに思っている。これがゴールではなく、スタート。学生を巻き込んで今後も協力を続けたい」と声を弾ませた。
地元の祝賀と今後の展望
PV会場そばの近鉄百貨店橿原店地階入り口でもPVの映像を中継した。登録後の祝賀式典では店員らと、橿原市の担当者が地酒の酒だるで鏡割り。午後にも再度実施され、買い物客に振る舞われた。この地酒を造った市内の「河合酒造」社長で、杜氏の西川暁子さん(51)は「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されていることに触れ「旅の思い出になるようなお酒を造っていきたい」と力を込めた。夫の実家が市内にあり、明日香村を時々観光するという川崎市の旅行業、国分優理さん(59)は「飛鳥は日本史始まりの場所なので、もっと人が来てもおかしくないと思っていた。日帰り観光ではなく、世界中の人にじっくりと観光してもらえるようになれば」と願った。
村民の思いと原風景維持
明日香村中央公民館のPVサテライト会場には村民ら約200人が集まり、登録決定後、垂れ幕に「祝『飛鳥・藤原の宮都』世界文化遺産登録決定」と書かれたくす玉を割った。SNSを通じて村の魅力を発信している村在住のカメラマン辻本一帆さん(27)は「『世界遺産になってよかった』と村民自身が思えるよう、訪れる人にも守られてきた歴史の深さや景観の美しさをよく知ってほしい」と語った。村の金属加工業、辻正道さん(62)は「村の魅力である日本の原風景を維持するため、ふるさと納税などを通じて民間でも盛り上げ、村に還元したい」と笑顔だった。近鉄飛鳥駅前では、古都飛鳥保存財団が任命する飛鳥応援大使らが手作りのくす玉や演奏などで祝った。
観光資源としての可能性
国内最大の考古学研究者の団体「日本考古学協会」会長を務める石川日出志・明治大名誉教授は「考古学的な発掘調査・研究によって具体像が明らかになった遺跡群が、世界遺産登録によって人類共有の財産と認められたことを歓迎する」とコメント。来年、明日香村に宿泊施設「星のや飛鳥」を開業予定の星野リゾートは「村の景観保護の取り組みを理解、尊重する国内外の旅行者に、一日を贅沢に楽しんでいただける地域づくりに貢献したい」との談話を出した。



