中之島映画祭でグランプリを受賞した映画「レンタル家族」(上坂龍之介監督)が、じわりと人気を広げている。昨年、東京都内の劇場で限定公開された際には連日満席となり、全国での拡大上映が実現した。単館上映からブームを起こした「侍タイムスリッパー」に続く作品との呼び声も高く、TOHOシネマズなんばなどで公開中だ。
家族代行サービスが生む疑似家族
物語の主人公は、離婚歴があり娘と離れて暮らす洋子(荻野友里)。認知症の母親の記憶とつじつまを合わせるため、レンタルサービスで「夫」と「娘」を雇う。やがて互いに疑似家族のような感情が芽生えていく。
兵庫県加西市出身で本作が初監督作となる上坂監督(31)は、「本当は愛し、愛される関係なのに外的要因が邪魔して、一緒にいられない。これまでの人間関係の否定と、これからの人間関係の肯定というテーマは学生時代の企画が基になっています」と語る。
日本社会の課題を描く
近年、「レンタル・ファミリー」、「PEACOCK/ピーコック」(公開中)など、日本の家族・友人代行サービスに着想を得た作品が目立つ。本作もその流れを汲むが、夫役や娘役などサービス提供者側の事情にも光を当て、ニーズの背景にある日本社会の課題を掘り下げる。性的少数者の生きづらさやネグレクト(育児放棄)といった問題にも踏み込んでいる。
上坂監督は上京後、テレビ番組制作会社を経て、企業のPR動画を手がける映像プロダクションを設立。父方の祖父の死がきっかけで映画制作に駆り立てられたという。「おじいちゃんに自分の映画を見せられなかった。(死後)対面した時、何しに東京に行ったのかと思った」と振り返る。
低予算ながら共感呼ぶ
「大学時代のバイト先の先輩」だという土井涼介と共同で脚本を完成させ、スタッフも日頃仕事する仲間を中心に編成。約400万円の制作費、約10日の撮影という低予算作品ながら、心のつながりを求める人物たちのドラマが共感を呼び、海外の映画祭にも招かれた。「大きな出来事が起きるわけではない。でも、こういう作品が今求められているのかな」と手応えを語る。
上映が始まった劇場でも満席が相次ぎ、快進撃は続く。「誰かのために何かをしたい。そうした人の優しさを信じたい、というのが映画監督としてのテーマです。作品を見た人の心を軽くすることができれば」と語る。



