作家・原田マハが脚本・監督を務めた映画『無用の人』(2027年1月公開)が、第74回サン・セバスチャン国際映画祭(9月18日〜26日)のコンペティション部門に選出された。日本公開に先立ち、スペインでワールドプレミア上映される。
本作は、原田が2014年に刊行した短編集『あなたは、誰かの大切な人』(講談社文庫)に収録された同名小説が原作。美術館で監視員として働く主人公・聡美(蒼井優)が、亡き父・唯一(イッセー尾形)の遺した一つの「鍵」をきっかけに、家族も知らなかった父の晩年や親子の記憶をたどる物語だ。
原田監督とスペインの縁
原田監督は代表作『暗幕のゲルニカ』の執筆にあたり、スペイン各地を2週間かけて取材。当時訪れることができず心残りだったサン・セバスチャンで、監督デビュー作のワールドプレミアが実現した。監督は「伝統あるサン・セバスチャン国際映画祭コンペティション部門に選出され、望外の喜びです」とコメント。「『暗幕のゲルニカ』の取材でバスク地方を訪れた際、豊かな文化が息づく風土で芸術と平和を愛する人々に出会い、深い感銘を受けました。父と娘のささやかな幸せを描いた本作が、この映画祭から世界へ飛び立ち、多くの方々の心の窓辺に留まる幸せの小鳥となることを願っています」と喜びを語った。
日本映画とのゆかり深い映画祭
サン・セバスチャン国際映画祭はスペイン語圏最大級の映画祭で、欧州でも注目される。近年では『災 劇場版』(2026年)が同部門に選出されたほか、『百花』(2022年)の川村元気監督が監督賞、『大いなる不在』(2023年)の藤竜也が最優秀俳優賞を受賞するなど、日本映画との縁が深い。
あわせて初公開された場面写真は、聡美が一人静かにこの世を去った父が残した詩集を手に取る印象的なシーンを切り取ったものだ。



