映画『クリスマス・キャロル/3人のゴーストたち』が11月13日に全世界同時公開される。主演のジョニー・デップにとって、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018年)以来、約8年ぶりとなる米メジャースタジオ作品への出演だ。
デップの歩みと訴訟の経緯をたどる新刊
ハリウッドの第一線で活躍してきたデップに何が起きていたのか。その歩みと、元妻で俳優のアンバー・ハードとの訴訟を詳細につづった書籍『ジョニー・デップの戦い DV疑惑の真実と復活への道』が、10月22日に文藝春秋から発売された。
著者は、ロサンゼルスを拠点に活動する映画ジャーナリストの猿渡由紀氏。女性誌の映画担当編集者を経て1992年に渡米し、ハリウッドスターや映画監督へのインタビュー、撮影現場の取材などを重ねてきた。デップには、映画『ブロウ』の北米公開時の2001年に初めて取材し、その後も主演作の公開に合わせて話を聞いてきたという。
約6週間の審理、ライブ中継された名誉毀損訴訟
本書では、幼少期や俳優としての成功、恋愛関係を振り返るとともに、ハードとの間で繰り広げられた訴訟の経緯を詳しく取り上げる。執筆の柱となったのは、2022年に米ヴァージニア州で行われた名誉毀損訴訟だ。2018年にハードが家庭内暴力の被害について意見記事を寄稿したことを受け、デップが提訴。ハードも反訴し、約6週間にわたる審理の模様はライブ中継された。
猿渡氏はあとがきで、当時の裁判報道について「そこで報じられるのは、視聴者の興味を最も引くと思われるごく一部の抜粋だけだった。それだけでは全体像は見えない」と指摘。裁判結果をソーシャルメディアの影響によって説明する見方にも異議を唱え、約6週間にわたって証言を聞き、証拠に向き合った陪審員の判断を重視。自身も裁判をリアルタイムで視聴していたが、執筆にあたり、改めて裁判記録や映像を確認し、見落とされがちな証言者の発言の重要性を再認識したという。
英国での訴訟も検証、全体像の理解へ
また、当時、日本のメディアに本件に関する記事を寄稿したり、取材に応じたりしていた猿渡氏は、「でもイギリスでジョニーは負けたんですよね?」と聞かれることがよくあったという。本書では、デップが英紙「ザ・サン」の発行元などを相手取った2020年の英国での名誉毀損訴訟についても、裁判記録をもとに検証。裁判後の関係者の動向にも触れている。
あとがきで猿渡氏は「情報量は膨大で、裁判中の証言にしても、裁判の後に起きたことにしても、すべてを盛り込むことはできなかった」としながらも、本書が、読者にとってこの出来事の全体像を理解する一助となることを願っている。
スターとしての華やかな歩みと、その一方で続いていた法廷での争い。長年ハリウッドを取材してきた著者が、証言や資料をもとにデップの半生をたどる一冊となっている。