映画『モアナと伝説の海』が公開中だ。ディズニー・アニメーションの名作を実写化した本作で、ドウェイン・ジョンソンはアニメーション版に続き、半神半人のマウイを演じている。プロモーションのため来日したドウェインが、日本との特別な縁や役に込めた思いを語った。
12年ぶりの来日「本当にうれしい」
プロモーションとしての来日は12年ぶり。ドウェインは「日本に戻ってくることができて、本当にうれしいです」と笑顔を見せる。この間、2025年公開の映画『スマッシング・マシーン』の撮影では、共演のエミリー・ブラントや監督のベニー・サフディとともに日本を訪れていた。
日本との縁は、プロレスラーとして活動していた時代にさかのぼる。「初めて日本を訪れたのは2000年代初頭でした。ツアーで日本各地を巡り、さまざまな会場で試合をしました」と振り返り、「私にとって、日本はいつ訪れても特別な場所です。本当に深い縁を感じています」と語った。
さらに、祖父でプロレスラーの故ハイ・チーフ・ピーター・マイビアも、1960年代から70年代にかけて日本を巡業していた。「祖父はアントニオ猪木さんの団体で日本各地を回っていました。その後、私自身も祖父が戦った日本の会場で試合をすることができたんです。本当にたくさんの縁を感じます」と明かした。
宮本武蔵の『五輪書』から影響を受けた自宅ジム
現在、自宅に建設中のジムにも、日本から受けた影響が反映されている。床に施すロゴは、筆で描いた円の一部をあえて閉じずに残したデザインだ。ドウェインは「円を未完のままにすることで、人間は常に未完成であり、成長の途中にあるという考えを表現したものだ」と説明する。
「宮本武蔵の『五輪書』から大きな影響を受けました。ジム全体も、その精神をイメージして作っています。トレーニングするときに意識しているのは“無心(No Mind)”です。このロゴを見るたび、自分はまだ完成していないということを思い出せるようにしています」と続けた。
マウイは亡き祖父のモデル
マウイを演じるのは、アニメーション映画『モアナと伝説の海』『モアナと伝説の海2』に続いて3度目。サモアにルーツを持ち、ポリネシア文化と深く結びついたマウイに、ドウェインは特別な意味を見いだしている。「マウイを演じるのは本当に楽しいです。マウイは、私たちのポリネシア文化と深く結びついたキャラクターです。それだけでも演じることは大きな喜びですが、私の祖父をモデルにしているんです」と話す。
その場でスマートフォンに保存された祖父の写真を見せながら、「祖父は大柄で、体にはタトゥーがあり、長い髪と、何よりも強いカリスマ性を持っていました。まさにマウイのモデルとなった人物です。これほど家族とのつながりを感じながら演じられる役には、もう二度と出会えないかもしれません」と述べる。
大きく、ユーモアと魅力にあふれ、歌も披露するマウイだが、ドウェインにとっては「もうこの世にはいない祖父とつながることができる存在でもあるんです」という。
祖父の死から得た教訓「体の異変を軽視しない」
祖父への思いを胸に、「祖父はプロレス界で多くの人に愛され、尊敬されていました。だから私は、最大限の敬意と感謝、そして愛情と喜びを持って、この役に向き合いました」と語る。
だが、その祖父は45歳という若さで他界。ドウェインが10歳のときだった。「とても強い人でしたが、その一方で、とても頑固でもありました」と振り返る。祖父は1年以上にわたって体調がすぐれず、息苦しさや激しい咳に苦しみ、時に血を吐くこともあったが、それでも病院に行こうとはしなかったという。
「当時の男性、特にプロレスラーの間には、『強くあらなければならない』という価値観がありました。祖父は自らの人生を通して、精いっぱい生きること、そして自分の体に起きている異変を決して軽視してはいけないことを教えてくれました。きちんと検査を受けることは、本当に大切です」と訴える。
「もし自分がもっと大人だったら、祖父を病院へ連れて行くことができたのに。今でも、そう思います」と悔やむ言葉も。学生時代にアメリカンフットボールに打ち込み、プロレスラー“ザ・ロック”として世界的人気を誇り、現在は俳優やプロデューサー、実業家として活躍するドウェイン。“無心”で体を鍛え、体の異変を決して見過ごさないという姿勢の根底には、亡き祖父への深い愛情と、未完であることを忘れない謙虚さがにじんでいた。



