岸井ゆきのが演じるのは、北陸の名家「青澤家」で発生した「中大垣町大量殺人事件」の最初の目撃者の一人となった女性・雑賀満喜子。11歳で17人が毒殺された現場に遭遇し、その記憶に30年間人生を侵食され続ける。
原作は、恩田陸氏が2005年に発表し、第59回日本推理作家協会賞の長編・連作短編集部門を受賞した同名小説。北陸の名家で17人が命を落とした大量毒殺事件と、その記憶によって30年後も人生を狂わされ続ける人々を描く。刊行から約20年を経て、初めて実写映像化される。
物語の発端は大量毒殺事件
舞台となるのは北陸・K市の名家、青澤家。「ユージニア」という意味不明の言葉が記された詩のような手紙が残されていた。岸井演じる満喜子は、事件から10年後、大学の卒業論文の題材として関係者へのインタビューを開始。少女時代の友人で、青澤家で唯一生き残った盲目の少女・青澤緋紗子と再会する。
この出会いをきっかけに満喜子の人生は大きく変化。卒業論文は後に小説『忘れられた祝祭』として出版され、ベストセラーとなるが、満喜子はその一冊を残して突然、世間から姿を消す。事件から約30年後、フリーライターの田波友子が事件を調べるためK市を訪れると、満喜子が再び姿を現し、米国で暮らしていた緋紗子も帰国。事件に残された者たちの記憶と、それぞれが抱える“真実”が交錯していく。
岸井ゆきの、22歳と43歳の満喜子を一人二役で
満喜子は、話す相手やその時の感情、状況によって声色や話し方を変幻自在に変える人物。岸井は、事件関係者への取材を重ねる22歳の満喜子と、約20年後の43歳となった姿を一人で演じ分ける。
岸井は、中学生の頃から恩田作品を読んでいたといい、出演オファーを「とても嬉しく、同じくらいのプレッシャーもありました」と回顧。脚本を安達奈緒子が担当すると知り、「いつも多角的に世界を描いていく安達さんとなら、この物語に一緒に飛び込めるかもしれない」と感じたという。
満喜子を演じたことについては、「話す人や、その時の気持ち、状況によって話す速度やイメージが変わる役だったので、シーンとシーンのつながりを気にせずお芝居をするのは新鮮でした」と振り返った。
作品については「人生は選択の連続であるはずなのに、自分の意思とは別に、巻き込まれてしまった、つまり運命にもたらされた現実の中で、それぞれがどう生きるかの軌跡だと感じます」と説明。「記憶されたものと記録は同じものではないかもしれません。ぜひ楽しんで観ていただければ幸いです」と呼びかけている。
恩田陸氏「またひとつの新たな『ユージニア』」
原作小説は国内累計発行部数38万部を記録。2020年に米ニューヨーク・タイムズの注目書籍に選ばれ、英ガーディアンでも評価されたほか、2022年にはドイツ犯罪小説賞の国際部門で1位を獲得した。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、韓国語の6言語に翻訳され、海外でも支持を集めている。
恩田氏はかつて、本作について「読むと不安になって、読み進めるとさらに不安が深くなる、デヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス』みたいなお話」と表現していた。これまで海外を含めて複数の映像化オファーがあったといい、「刊行20年目の節目に映像化が決まったのは、完全版が出たこともあり、感慨深いものがあります」とコメント。「映像版は、またひとつの新たな『ユージニア』になっていると思います。素晴らしい脚本とキャストに恵まれ、私も皆さんと一緒にワクワクしています」と期待を寄せた。
安達奈緒子氏「傍観者という安全な場所から引きずり出す物語」
脚本を担当するのは、ドラマ『きのう何食べた?』、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』などを手がけ、岸井とは『お別れホスピタル』『お別れホスピタル2』でも組んだ安達奈緒子氏。脚本の大筋が完成した頃、恩田へ物語の“正解”を尋ねたものの、「先生は“分かりやすい正解”を絶妙に回避されていたように思います」と振り返る。
安達氏は、『ユージニア』を「読者や視聴者を、“傍観者”という安全な場所から引きずり出す物語」と表現。「否応なく事件に巻き込まれ、自分が見たものが見たまま真実だと言い切れるのか、物語が進むにつれて分からなくなってしまう」と、その映像化の難しさを語った。
それでも、物語を動かす満喜子がつかんだ“満喜子だけの真実”を見たいという思いで脚本を執筆。「岸井ゆきのさんが、その身体を通じて満喜子の体験を紡ぎ出してくださっています。『真実を知っているのは私だけ』という陶酔感に一緒に浸っていただけたら」とメッセージを寄せている。
古川豪監督らが映像化、WOWOWプロデューサーのコメント
メイン監督は、長編映画デビュー作『金子差入店』を手がけた古川豪氏。もう一人の監督として、NHKドラマ『東京サラダボウル』や『ガンニバル』に参加した川井隼人氏が名を連ねる。古川監督は「恩田陸先生が作り上げた唯一無二の世界観、ページをめくる手を止められないあの感覚を大切に、岸井ゆきのさんはじめ豪華キャスト陣、大切なスタッフたちとともに作りました」とコメントした。
WOWOWの山田雅樹チーフプロデューサーは、原作が突きつけるのは「誰がやったのか」ではなく、「なぜ人はこの事件に狂わされ、損なわれ続けるのか」という問いだと説明。視聴者自身が物語へ参加しているような感覚も作品の特徴に挙げ、「事実を超えた真実で、どうか震えていただけたら幸いです」と語った。
岸井ゆきのプロフィール
岸井ゆきのは、1992年2月11日生まれ、神奈川県出身。映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』『愛がなんだ』『やがて海へと届く』『ケイコ 目を澄ませて』、ドラマ『まんぷく』『恋せぬふたり』『アトムの童』『お別れホスピタル』などに出演。『ケイコ 目を澄ませて』では、聴覚障害のあるプロボクサーを演じ、第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。



