老化を止め、がんの進行も抑制する「不老因子」の発見で注目されるがん研究の第一人者を、人気ドキュメンタリー番組で取り上げることになった番組制作会社の若手ディレクター・三田紗矢子。大学の研究室に通って密着取材を重ねるうちに、研究者のキャリアや私生活に多くの謎があることに気づく。やがて三田は、研究成果そのものを揺るがしかねない不正疑惑に行き当たる。
テレビ業界のリアルな描写と謎の研究者
物語はテレビ業界のリアルな描写を随所に交えながら進行する。ドキュメンタリー制作の現場で起こる出来事や、取材対象との距離感などが丁寧に描かれる。一方で、注目されるがん研究者の過去や研究の裏側には謎が多く、読者は三田とともにその真実へと迫ることになる。
真実と虚構の境界を問う結末
研究成果を揺るがす不正疑惑を追う中で、物語は一気に驚きの結末へと読者を導く。真実と虚構の境界とは何か。読後、そんな重い問いが心に残る長編小説だ。『風車と巨人』は岩井圭也著で、集英社から2640円で刊行されている。



