指揮者の生涯描く初の大河小説、瀧羽麻子さん『我らが音楽に祝福あれ』
指揮者の生涯描く初の大河小説、瀧羽麻子さん

5歳で音楽のとりこになり、指揮者として国内外のオーケストラと歩んだ男性の75年を描く大河小説『我らが音楽に祝福あれ』が刊行された。著者は作家の瀧羽麻子さん。デビュー20周年の節目を来年に控え、長年の憧れだった大河小説に初挑戦した。

音楽に全てをささげた75年

物語は1950年から2025年までを描く。母が働くお屋敷の娘・貴子に連れていかれた教会で、5歳の佳和は音楽に魅了される。やがて音大で指揮者の道を志し、盟友の戸川や名匠ハルトマンらの導きを受けながら、国内外のオーケストラと歩んでいく。

大河小説に初挑戦した理由

『ありえないほどうるさいオルゴール店』など現代が舞台の短編が得意な著者だが、音楽は「にわかファン」だという。「知らないことを知るワクワク感」を原動力に、一人の人生を長く追える指揮者を主役にした。終戦直後から書き始めたのは、昭和を書き残したい思いもあったからという。

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才能のテーマと作品の魅力

指揮者は人に音楽を奏でてもらう対人スキルが求められ、楽団の音楽監督になれば経営面で奔走し、社会情勢とも無縁でいられない特殊な立場だ。佳和は圧倒的なカリスマ性こそないものの、癖の強い登場人物たちと打ち解けるしなやかさが魅力的だ。

「佳和は音楽という大きなものの前で謙虚で、運命に乗っていける人。いろいろな人を書けるのが大河の面白さなので、彼らからの影響を素直に受け入れる器のある主人公にしたかった」と語る。

佳和の才を認め、音楽に関わるのが「天啓」だと背中を押すのが幼なじみの貴子だ。彼女の言葉は、授かった才能をどう生かすかという本作のテーマを象徴する。「才能は『あるかないか』の二択で、種がないと水をやっても芽は出ない。ただ芽吹いたら、手をかけ身を削って才能を育てないといけない」という著者の思いは、愚直に力を出し切る佳和の姿に詰まっている。

演奏解釈の面白さと今後の展望

チャイコフスキー、ベートーベン、マーラーなどの指揮者ごとの演奏解釈が描かれる点も面白い。同じ楽譜でも、奏者や指揮者次第で受け取り方は千差万別だ。「本も同じ。読みたいように読んでほしい」と笑顔を見せる。

大河小説の手応えをつかみ、意欲も湧いたという。「100人くらい人が出てきて使い捨てるくらい、おおらかに大河を書きたい。もうちょっと腕を磨いてから」と語った。

『我らが音楽に祝福あれ』はポプラ社から1980円で刊行中。

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